第九章 双月の舞踏会
第八話 タバサ
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ぐに駆け出していった。
護衛の騎士から押し寄せる生徒たち守られながら、幼い子供がそうするように、アンリエッタは頬を微かに膨らませ、
「もうちょっと名残惜しそうにしてくれても……いいではないですか」
あっと言う間に消えたいった背中に向けて不満気に呟いた。
「っ、くそっ。何処にいったんだルイズは」
舞踏会が行われていた本塔から出た士郎は、ホールで唯一姿が見えなかったルイズを探すため、可能性がある場所をしらみ潰しに当たってみるが、影も形も見えなかった。ホールから出る際、キュルケたちにルイズの居場所を聞いてみたが、全員知らないと言う。
「こういう時に使い魔の力が使えたらいいんだが……どうする」
ルイズの部屋を確認し終えた士郎は、学院の中庭を走りながら焦った様子で自問する。
使い魔の力―――それは、ガンダールヴの力ではなく、全ての使い魔が持つ力。
主人の目となり、耳となる力。
以前、アルビオンでルイズが危機に陥った時、自分の左目が別の景色を映したその力を士郎は欲していた。あの後、士郎はルイズの安全を守るために、その使い魔の力を自由に使えるようにしたいと言ったのだが、何故か強固に反対されてしまい、結局今もそんな力は使うことは出来ない。
こんな時のために覚えておきたかったんだが。
後悔が頭を過ぎるが、別の景色が見えないということは、ルイズに危険は及んでいないということではないかと思い直す士郎だったが、直ぐに既に気を失っている可能性もあると、更に焦りを強めてしまう。
士郎の焦りに同調するように、空に輝く星々も何処からともなく現れた雲により姿を隠してしまい、人通りの少ない中庭は完全に闇に満ち、伸ばした手も見えないほどの暗さとなっていた。
ルイズの名を呼びながら、士郎がヴェストリの広場に辿り着いた時、不意に強い風が吹き、上空の空を覆っていた雲の隙間から二つの月が姿を現し、辺りを照らし出す。
ヴェストリの広場に落ちてきた光りは、走る士郎を照らし出すと同時に―――士郎目掛け飛んでくる氷の矢を闇の中から暴き出した。
「―――ッ!」
地面が抉れる音に遅れて、地面を削る音が響く。
咄嗟に飛び離れた士郎が、地面の上を滑りながら氷の矢が飛んできた方向に顔を向ける。
顔を上げた士郎の視界に、無数の氷の矢が飛び込む。
「投影開始ッ」
地面を蹴った士郎は、飛んでくる無数の氷の矢に向かって駆け出し、両手に干将と莫耶を投影する。横殴りの雨のように襲い来る矢と矢の隙間を縫うように駆け抜け、傷一つ負うことなく一瞬で氷の矢と交差した士郎は、襲撃者の元へと走る速度を更に上げる。氷の矢が飛んできた方向は
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