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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第二十二話 五十年後
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 澄み切った空の蒼を下地にし、五本の箒が星を描くように交差する構図と、縁を囲むように掲げられた『501 st Joint Fighter Wing』の文字。それは紛れもなくあの第501統合戦闘航空団の部隊章であった。
 震える手でオルゴールの蓋を開けると、わたしは何度もオルゴールを落としそうになりながらネジを巻いた。十分に巻いたところで手を離すと、オルゴールはその身に刻まれた音色を静かに奏で始めた。

「そんな……この曲って……本当に……?」

 『リリー・マルレーン』かつて夕焼けに燃えるロマーニャの広場でサーニャさんとミーナ中佐が披露してくれたあの曲。いまオルゴールから溢れ出てくる音色はまさしく『リリー・マルレーン』に違いなかった。それだけではない。この独特のアレンジは、サーニャさんの演奏にしかなかったはずのものだ。
 わたしは一緒に送られてきたという封筒を探し、ゆっくりと封を切った。果たして、封筒に入っていたのはすっかり色褪せてしまった一枚の写真だった。
 今時あり得ないモノクロの写真は、しかしわたしが探し求めてやまない確かな証だった。

「ここに、いたんだ……」

 ようやく見つけた確かなつながりと証に感極まっていると、やおら病室の外から凄い足音が聞こえてきた。まったく、病院の廊下を爆走するなんて一体どこの大馬鹿者なん――

「お、沖田さん!? お見舞いの方がいらしてますよ!? なんかもう下はいろいろ大変なんですから!! しっかりしてください!!」
「は、はいぃ!?」

 あろうことか、やって来たのは病院の看護婦だった。ナースハットはズレズレだし、スカートの裾も乱れまくっている。一体何がどうしたらここまで慌てられるのか不思議なほどだった。

「来るなら来るとどうして言ってくれないんです!? あぁ、サインいただけないかしら……」
「え? ちょ、あの、なにがなんだかさっぱり――」
「ええ、ええ。大丈夫です。すぐにお連れしますから、待っててくださいね!!」

 むしろ貴女が大丈夫なのかと言いたかったが、看護婦は来たときと同じようにハリケーンのような速さで去ってしまった。呆気にとられてポカンとしたまま硬直していると、またしても廊下の奥から大勢の足音が聞こえてくる。
 それも四、五人というレベルではない。おそらく十人以上いるだろう。すわヤクザの討ち入りかとわたしは焦ったがどうすることもできない。ひとまずベッドの上の荷物を脇へ退け、襟元や寝癖などを撫でつけてみる。
 そうこうしているうちに足音はどんどん近づいてきて、遂にわたしの病室の前で止まった。
 一瞬の静寂があってから、控えめなノックの音がする。

「ど、どうぞ!!」

 妙な緊張のせいで声が裏返ってしまったけれど、わたしは誰とも知れない来客に向
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