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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第二十二話 五十年後
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生き抜き、五体満足で再び自分の時代に帰ってこられたのなら、それは間違いなく奇跡なんだから。だけど、わたしの胸に真っ先に湧きあがった感情は、喜びでも安堵でもなく――寂しさと郷愁だった。
 『本来自分がいるべき場所』にあって郷愁も何もあったものではないはずなのに、ただ無性に寂しかった。

「逢いたいな……みんなに……」

 起き上がることもままならない体を恨めしく思いながら、わたしはそっと目を閉じた。








 わたしが意識を取り戻してからは、時間が流れるように過ぎて行った。
 家族は何度も面会に来たし、部隊の同僚や隊長も見舞いに来てくれた。精密検査や健康状態の把握、リハビリなども始まったおかげでずいぶん忙しくなり、何も考えずとも日々が過ぎて行くのは、ある意味では救いだったかもしれない。

「こんにちは――って、またご飯残したんですか? ちゃんと食べないと回復しないんですよ?」
「……いいです。別に、必要ないですから」
「まったくもう、ホントに頑固なんだから……」

 宮藤さんのご飯なら、きっともっと美味しかった。
 そう思うわたしは、味気ない病院食に手をつける気にもなれず、いつも完食せずに残してばかりいた。多少食べなくたって死にはしない。自分でもわかるほどに投げやりになっていたと思う。
 そんな生活に変化が訪れたのは、わたしの意識が戻って一週間がたった、ある日の事だった。









「ない……こっちにもない……どうしてなの?」

 遺憾ながら入院生活にも慣れてきたその日、わたしは看護婦に頼んで持ち込んでもらった本を片っ端から読み漁っていた。その本というのも、『オペレーション・マルスの真実』とか『第501統合戦闘航空団〜栄光の軌跡〜』あるいは『世界のウィッチ名鑑』だとかいう物ばかりで、わたしはその本の中にある501の記述についてあるものを探していた。
 ――すなわち、自分の痕跡である。
 最後の出撃の時、あのひとたちは必ず帰ってこいと言ってくれた。決して忘れないとも言ってくれた。だというのに、後世に残された記録や証言の中に、わたしの存在を証明するものは何も残ってはいなかった。まるで、始めからそんな人間など存在しなかったとでも言うように。

「そんな……」

 都合六冊目となる本を投げ出して、わたしは顔を両手で覆った。
 あの日々の全てが嘘のように消えていたことが信じられなかった。しかし、その一方で冷徹なほどに現実を見つめている自分もいた。
 そもそも、わたしがこの時代に帰って来たということは、時間が、ひいては歴史そのものが「本来の形」に戻ったと言う事ではないのか。だとするならば、異分子に過ぎない私の存在が歴史の修正力によって消去されていたとしても、それはおかしく
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