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センゴク恋姫記
第1幕 仙石権兵衛
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がないわねぇ……そろそろ助けてくれないかしら、ハンベーちゃん」
「!?」

 その大男が、自身の背後を振り向いて呟いた言葉。
 ハンベー……そう呼ばれた人物が、白いもやからゆっくりと現れたのである。

「あ……あ……」
「……お久しぶりですね、ゴンベエ」
「は、半兵衛様!?」

 ゴンベエが眼を見開いて驚く。
 それは、三年前……天正7年(1579年)に亡くなった筈の人物。
 稀代の天才軍師として謳われ、権兵衛とも浅からぬ(えにし)のある人物。

 竹中半兵衛重治、その人だった。

「は、半兵衛様……生きて、生きておいでだったのですか!?」

 ゴンベエが、刀を取り落として涙ぐむ。
 彼にとって半兵衛は、上司である羽柴秀吉と同じくらい尊敬する人物だった。
 その死には、上司と共に涙したほどである。

 その人物が目の前にいる――

「よか、よかった……生きて、生きておられたのですね……」
「ゴンベエ……残念ですが、私は生きておりませんよ」
「……………………はっ?」

 半兵衛の言葉に、泣きながら固まるゴンベエ。

「私は確かに死にました。ここにいるのは実体じゃありません」
「……え? あ…………え?」
「ハンベーちゃ〜ん。言っても理解できないと思うわよん?」

 苦笑した大男が、半兵衛に諭すように言う。
 その言葉に苦笑した半兵衛は、コホンと咳払いをした。

「ここにいる私は、ただの夢の欠片……貴方の思い出です」
「おも……いで」
「ええ。そう思ってください」

 そう言って微笑む半兵衛に、がくっと膝を崩すゴンベエ。

「……夢、夢じゃったか……そうじゃ、半兵衛様が、生きておられるわけが、ない……」
「……すみませんね、ゴンベエ。ですが、会えて嬉しかったですよ」
「!! も、もちろんです! わ、わしだって、半兵衛様には、いくら返しても返せぬ恩があります……!」

 ゴシゴシと自らの目を擦るゴンベエ。
 その姿に、半兵衛はフッ、と笑う。

「しかし……夢にしては……こんな大男、見たこともないんじゃが」

 そう言って大男を見やるゴンベエ。
 その視線に気付いた大男は、バチーンッとウインクする。
 思わず卒倒しかけるゴンベエ。

「……はっ!? なんじゃ今のは! 気が遠くなったんじゃが……」
貂蝉(ちょうせん)さん……」
「ホホホ、ごめんしてねぇん。この子、結構可愛くて、気に入っちゃったのよん」
「……(ゾクゾク)」

 悪寒が全身に伝わり、震え上がるゴンベエ。
 その様子に苦笑しつつ、半兵衛は再度咳払いした。

「さて……そろそろ本題に入りましょう。ゴンベエ……実は貴方にお願いがあるのです」
「お願い、ですと?」
「ええ……
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