第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十一 〜伝説の名医〜
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しょうか?」
「……何故、そう言える? タマなし野郎だって、中には違う奴がいるかも知れないじゃないか」
「そうかも知れません。ですが、十常侍の結束の固さはよく知られている話です。それは裏を返せば、全員が多少の差違があったとしても、基本は似た者同士。だからこそ、手を結ぶ事はあっても、相争う事はあり得ない。私は、そう見ています」
「つまり、戻ったところで俺達は始末される……そう言いたいんだな?」
「そうです」
稟は、きっぱりと言った。
「なら、俺達はどうすればいい? いくらアンタに助けられても、何の意味もないぜ」
助かる方法、か。
それが思い浮かばぬ故に、先程まで苦慮していたのだ。
「……一つだけ、手立てがあります」
稟に、全員の視線が集まる。
「どんな手立てだ?」
「この洛陽を出る事です。そして、十常侍の目の届かない場所まで行く事です」
「そんな場所が、都合よくある訳がない!」
「いいえ。今の朝廷が実効支配しているのは、司隷と雍州の一部のみ。例えば、涼州などは、まず手は及ばないでしょうね」
「涼州だと? あんな辺境に……」
呻くように、男が言う。
「だからこそ、です。それに、涼州は元々人の往来が活発な土地です。余所者が紛れ込んでも、不審に思われる事はないでしょう」
「稟。だが、伝手はあるのか?」
「はい。涼州刺史の馬騰殿とは、些か面識がありますので。義に厚い御仁ですし、頼る者を突き放す事はしません」
男達は、顔を見合わせる。
「……なぁ、アンタ、一体何者なんだ? そっちの姉ちゃんもだが、二人とも只者とは思えないぜ?」
「さて、な。それより、どうするのだ? 懸念しているであろう妻子ならば、何とか連れて参っても良い」
「ほ、本当か?」
最初に口を割った男の眼に、希望が宿る。
「確約は出来ぬが、お前達が疑われ始めれば、直ちに累が及ぼう。よって、決断は今この場でせよ。躊躇している刻はないぞ?」
一瞬の沈黙の後。
「……俺は、アンタを信じる。それしか、道はなさそうだからな」
その男が、真っ先に同意する。
残る二人は暫し逡巡していたが、
「……仕方ねぇ。タマなし野郎にむざむざ殺されるのも癪だからな」
「ああ。……だが、アンタの名を聞かせて欲しい。俺達にそこまでしようとする相手が、正体不明のままじゃ気味が悪いからな」
……そうだな、もう良かろう。
「我が名は土方歳三。この者は私の軍師、郭嘉だ」
男達の顔が、驚愕に変わる。
「あ、アンタが鬼の土方か!」
うむ、どうも妙な二つ名が広まってしまっているようだな……。
「ははは、相手が悪過ぎたな。俺達が敵う訳がない筈だ」
「最初からそう言って貰えば、俺達も無駄な抵抗はしなかったぜ?」
「……随分、恐れられてしまっていますね」
「
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