暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十一 〜伝説の名医〜
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
奴もただの変態ではなかったか。

 少しして、華佗と稟が姿を見せた。
「済んだぞ」
「して、どうか?」
「うむ。確かに、体内の氣の巡りが良くなかった。何度か治療を施せば、それは改善するだろう」
「……そうか。忝い」
「だが、妄想癖だけは治せないぞ? そればかりは、本人次第だ」
「わかった。稟、気分はどうか?」
「ええ。身体の何処かが重いような感じが、今はだいぶ楽になった気がします。……申し訳ありません」
「何故謝る?」
「いえ。度々あのような醜態をお目にかけて、歳三様に無用なご心配をおかけしましたから」
「仕方あるまい。だが、氣の巡りとは気がつかなかったな」
「私も、華佗殿に指摘されるまでは、体質なのだとばかり思っていました」
 華佗は、両手を水桶でバシャバシャと洗いながら、
「氣の流れは、見える者はごく一部だ。土方は、氣の流れが良いようだ」
「ほう。診察せずともわかるものなのか?」
「ある程度はな。だからこそ、俺はこうして医者として人々を救える訳だ」
 そう話す華佗は、自信に満ち溢れている。
 だが、決して傲岸に見えぬのは、流石と言うべきか。
「華佗。では稟の事、頼んだぞ?」
「任せて貰おう。俺は、信頼には全力で応える事にしている」
「おお、流石はだぁりん。このようなイイオノコ、そうはおらんぞ」
「あら〜ん。じゃ、私からもご褒美のちゅーを」
「む? 貂蝉、私のだぁりんに何をする?」
「いいじゃない。卑弥呼ったら欲張りねん」
「い、いや、そういうのはいいから。二人とも、な?」
 後ずさりを始める華佗。
「遠慮は無用だぞ、だぁりん」
「そうよん。こんないい漢女(おとめ)が二人もいるのよ?」
「だ、だから要らん!」
 脱兎の如く駆け出す華佗。
「おお、どこへ行くのだ。だぁりん!」
「まってぇ!」
 そして、後を追う筋肉達磨達。
「……歳三様。私、少し吐き気が」
「……私も、些か気分が悪い」
 性根は悪くない、が……。
「稟はそのまま休んでいるがよい」
「はい。歳三様は?」
「私は、あの三人と話をして参る」
「……では、私も同席させていただきます」
 毅然と、稟が言った。
「話をするように提案したのは私です。それに、私も問い質したい事があります」
「無理はしておらぬな?」
「お気遣いなく。流石に、そこまで脆弱ではありませんよ」
「ならば、参れ」
「はい」

 手当ては受けたものの、まだ歩き回るのは困難なのだろう。
 縛めは解いたままにも関わらず、男達はぐったりと身体を横たえている。
 ……が、私を見ると、途端に怯えの色を見せた。
「も、もう喋る事なんかないぞ!」
「それは、承知している。尋問するつもりはないが、一つだけ、聞かせて貰いたい」
「…………」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ