第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十一 〜伝説の名医〜
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奴もただの変態ではなかったか。
少しして、華佗と稟が姿を見せた。
「済んだぞ」
「して、どうか?」
「うむ。確かに、体内の氣の巡りが良くなかった。何度か治療を施せば、それは改善するだろう」
「……そうか。忝い」
「だが、妄想癖だけは治せないぞ? そればかりは、本人次第だ」
「わかった。稟、気分はどうか?」
「ええ。身体の何処かが重いような感じが、今はだいぶ楽になった気がします。……申し訳ありません」
「何故謝る?」
「いえ。度々あのような醜態をお目にかけて、歳三様に無用なご心配をおかけしましたから」
「仕方あるまい。だが、氣の巡りとは気がつかなかったな」
「私も、華佗殿に指摘されるまでは、体質なのだとばかり思っていました」
華佗は、両手を水桶でバシャバシャと洗いながら、
「氣の流れは、見える者はごく一部だ。土方は、氣の流れが良いようだ」
「ほう。診察せずともわかるものなのか?」
「ある程度はな。だからこそ、俺はこうして医者として人々を救える訳だ」
そう話す華佗は、自信に満ち溢れている。
だが、決して傲岸に見えぬのは、流石と言うべきか。
「華佗。では稟の事、頼んだぞ?」
「任せて貰おう。俺は、信頼には全力で応える事にしている」
「おお、流石はだぁりん。このようなイイオノコ、そうはおらんぞ」
「あら〜ん。じゃ、私からもご褒美のちゅーを」
「む? 貂蝉、私のだぁりんに何をする?」
「いいじゃない。卑弥呼ったら欲張りねん」
「い、いや、そういうのはいいから。二人とも、な?」
後ずさりを始める華佗。
「遠慮は無用だぞ、だぁりん」
「そうよん。こんないい漢女が二人もいるのよ?」
「だ、だから要らん!」
脱兎の如く駆け出す華佗。
「おお、どこへ行くのだ。だぁりん!」
「まってぇ!」
そして、後を追う筋肉達磨達。
「……歳三様。私、少し吐き気が」
「……私も、些か気分が悪い」
性根は悪くない、が……。
「稟はそのまま休んでいるがよい」
「はい。歳三様は?」
「私は、あの三人と話をして参る」
「……では、私も同席させていただきます」
毅然と、稟が言った。
「話をするように提案したのは私です。それに、私も問い質したい事があります」
「無理はしておらぬな?」
「お気遣いなく。流石に、そこまで脆弱ではありませんよ」
「ならば、参れ」
「はい」
手当ては受けたものの、まだ歩き回るのは困難なのだろう。
縛めは解いたままにも関わらず、男達はぐったりと身体を横たえている。
……が、私を見ると、途端に怯えの色を見せた。
「も、もう喋る事なんかないぞ!」
「それは、承知している。尋問するつもりはないが、一つだけ、聞かせて貰いたい」
「…………」
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