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至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十一 〜伝説の名医〜
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「ああ。この稟の身体、診てやってくれぬか?」
「と、歳三様?」
 突然の事に驚く稟。
「お前の鼻血、あれは流石に尋常ではない。放置しておいては命に障るぞ?」
「……面目次第もありません」
「鼻血? どういう事だ?」
「稟。……良いな?」
「……はい」
 俯いたまま、稟は頷いた。
 診て貰うにも、症状を説明せねば始まるまい。

 私の話を黙って聞いた華佗は、少し考えてから
「なるほど。病、とは少し違うようだが……。だが、体質であれば確かに俺の分野でもある。いいだろう、引き受けよう」
 そう、言い放った。
「頼む。稟は、私には掛け替えのない軍師だ、失う訳にはいかぬ」
「歳三様……」
 稟の目が、潤んでいるように見えた。
「では、私は外している。頼んだぞ、華陀」
「ああ、任されよう」
 部屋を出て、庭にいる卑弥呼に声をかけた。
「少し、良いか?」
「おお、土方殿。私に用か?」
「些か、尋ねたい事がある」
「良かろう」
 大きめの石に、並んで腰掛ける。
「貴殿は、確かに卑弥呼なのだな?」
「どういう意味かはわからんが、私は間違いなく卑弥呼だ」
「ならば、倭の邪馬台国は存じているな?」
「無論だ。あれは私が造った国。……そうか、土方殿も倭から参ったのだな」
「正確には異なるが、倭の地である事は確かだ」
「…………」
 卑弥呼は、一瞬押し黙る。
「土方殿は、己が知る歴史との違和感について……それを聞きたいのかな?」
「然様。私が知る限り、邪馬台国は女王卑弥呼が治めていた、と。だが、貴殿は違うようだ」
「私はこれでも漢女(おとめ)のつもりだが?」
 ……発音が微妙に異なるような気がする。
 あまり、深く追求しない方が良いのだろう。
 そう、私の勘が告げている。
「そして、此処はこのように女子(おなご)ばかりだ。衣装といい、食物といい、大凡私の知識や想像とはかけ離れている」
「ふむ。それで違和感、か」
「如何にも。無論、私がこの世界にやって来たのは、何かしらの天命と心得るが」
「なるほど。それなれば、一つ教えて進ぜよう。この世界は、『外史』と呼ばれておる」
「外史?」
「うむ。土方殿が知る邪馬台国や三国の事。それは、全て『正史』での出来事だ。この世界に来るまでに土方殿が体験した事も全て、正史での事」
「では、この世界は、全く異なる……そういう事か」
「そうなるな。土方殿は、平行世界、という言葉を知っているか?」
「いや。だが、そう説明されれば合点がいく」
「ただし、平行世界と言えども、肉体や精神はそのまま。無論、命を落とせばそこまでだ」
「……肝に銘じよう」
「私からはこれ以上の事は言えぬのじゃよ。後は、貂蝉の奴に尋ねるが良かろう」
「……相わかった」
 やはり、
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