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至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十一 〜伝説の名医〜
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と言えども、皆が皆、把握し切れる訳ではないのだよ、星」
「そうか……」
「それと、歳三様と知って後を尾けた訳ではない……。つまりは、見張られていたのは何進殿、となります」
「そのお屋敷から、見慣れないお兄さんが出てきたので、尾行したと言う訳ですね」
「しかし、相手が悪かったとしか申せませぬな。主も疾風も、並の間諜では敵う筈もありませぬからな」
「此度は手練れではなかっただけの事。個人の武では、皆に敵わぬ」
「歳三殿のは、ただの謙遜としか受け取られませぬぞ? だからこそ、私もお任せしたのです」
「……それは良い。さて、早急に決めねばならぬ事がいくつかある」
 私の言葉に、まず風が反応した。
「そうですね。やはり、夏ツさんの事を調べる必要がありますねー」
 星が続く。
「あの者どもの処分も決めなければなりますまい。他にも仲間がいると考えた方が良いかと」
「それから、この事は何進殿にも知らせるべきかと。屋敷が監視されていた事もあります」
 何やら、不毛な争いに巻き込まれかけているのかも知れぬな。
 相手は魑魅魍魎の世界に救う妖怪ども。
 迂闊な真似も出来ぬ、難儀な事だ。
「まずは、夏ツに関する調査は風と疾風に任せる。些細な事でも構わぬ、情報は出来る限り集めよ」
「御意ですー」
「畏まりました」
「大将軍への知らせは星が良かろう。疾風は顔を覚えられている可能性もある」
「はっ、お任せあれ」
 風と疾風には費えとして金を与え、星には紹介状のみを持たせた。
 万が一を考え、用向きは書状ではなく口頭とした。
 星が不覚を取るとも思えぬが、用心に越した事はあるまい。

「後は、あの三名ですが」
 残った稟と二人、手立てを考える。
「一番確かなのは、口封じだが……」
「手当てをされた華陀殿が反対されるかと。それに、命は助けると、一度は約束された事もあります」
「うむ。だが、このまま解き放つ訳には参らぬ」
「はい。彼らは安堵から、何を口にするかわかりません。何進殿だけでなく、華陀殿にも累が及びかねません」
「口止めは無意味か。然りとて、このまま此処に留めておく訳にもいくまい」
「連絡がなければ、彼らの仲間が探索に動きましょう。目撃者はいなくとも、この洛陽にいる限り、隠し通せる保証はありませぬ」
 存外、処置に困る事態になった。
「立て込んでいるところ済まんが、手当てが終わったぞ」
 華陀が、顔を覗かせた。
「歳三様、彼らと少し、話をされては如何でしょう?」
「ふむ。理由は?」
「処置が決められないのであれば、彼らの人となりを確かめるのも手かと。それに、今は歳三様を恐れているでしょう。話をするならこの機かと」
「……その通りだな。よし、行くとしよう。それから華陀、今一つ頼みがあるのだが」
「俺に?」

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