第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十一 〜伝説の名医〜
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結局、一人が吐くと、他の二人も観念したようであった。
最初の虚勢も何処へやら、洗いざらい吐いた。
無論、黒幕の正体も含めて。
「……どうやら、偽りではないようだな。では、命だけは助けてとらそう」
「はは……ひへ」
安心したのか、三人揃って、気を失った。
さて、手当してやるとするか。
そう思ったところに。
「土方殿、宜しいか?」
卑弥呼が、入口に立っていた。
「何用かな?」
「うむ、尋問は終わったと見えるな。奴等の怪我を手当せねばならんのだろう?」
「そうだ。これから取り掛かるところだが」
「実は、だぁりんが戻ってきているのじゃ」
「だぁりん?」
「そうじゃ。腕の立つ医者でな」
なるほど、此処は医者の屋敷であったのか。
「それは有り難いのだが、十分な謝礼は出来ぬ。それでも構わぬ、と?」
「だぁりんは謝礼など受け取らぬわ。では、連れて来よう」
そして、卑弥呼に連れて来られたのは、一人の若者。
眼に宿る光の強さ、そして全身から漂う気迫。
……幸いというか、異形の相ではない。
だが、只者ではないな。
「俺は五斗米道に身を置く医者、華陀だ」
「華陀? この時代きっての名医と言われるのは、貴殿か」
「名医? 卑弥呼、俺はそんな呼ばれ方をしているのか?」
華陀と名乗る若者は、頻りに首を傾げる。
「だぁりんは有名人だからな。無理もなかろう」
「そうか。で、アンタは?」
「私は土方と申す。貴殿の屋敷とは知らず、穢してしまった事はお詫びする」
「いや、あらましは二人から聞いた。だが、病人だろうが怪我人だろうが、医者を求めるところあらば駆けつける、それが俺の信条だ。任せて貰おう」
「では、お願い致す」
三人の縛めを解き、私は部屋の外に出た。
「卑弥呼、頼みがある」
「聞こう」
「尋問の事、皆には黙っていて貰いたい。あの者達には、あまりにも残酷に過ぎる光景だろうからな」
「うむ、それが良かろう。貂蝉にも、そう申しておく」
私は頷いてから、井戸を借りた。
少しでも、血の臭いを消しておかねばな……。
半刻ほど過ぎ、皆が揃った。
疾風を除き、貂蝉と卑弥呼の異形さには流石に引いたようだ。
とは申せ、少なくとも敵方ではない事は、すぐに理解できたらしい。
刻が惜しいので、屋敷の別室を借り、尋問で得た情報を皆に話した。
「……黒幕は十常侍、とは予想していましたが」
「筆頭のお二人ではなかったのですねー」
十常侍。
皇帝に仕える宦官の事であり、外戚の何進とは対立関係にある。
筆頭は張譲と趙忠であり、二人を中心に固く結束している……そう、聞いていたのだが。
「疾風、夏ツとはどのような奴なんだ?」
「いや、私はそもそも、十常侍との関わりがなかったのだ。官吏
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