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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十話  名簿
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のだ。民生品では帝国はフェザーン、自由惑星同盟に及ばない。情けない話だ。

キスリングの正面に腰を下ろした。それを待ちかねたようにキスリングが口を開いた。
「厄介な連中です」
「……」
「ワーレン提督が旗艦サラマンドルで襲われました。幸い同乗していた広域捜査局の人間が取り押えましたが……」

「その話は聞いている。確かに厄介な連中だな、何時の間に艦隊に乗り込んだのか……」
まして乗り込んだのが旗艦サラマンドルだ。艦隊司令官達は皆が地球教に対して言い様の無い薄気味悪さを感じている。

「取り押さえる際、広域捜査局の人間が一名死亡しました」
「死亡?」
驚いて私が問い返すとキスリングは頷いた。
「ナイフで足を切られたようです。毒が塗ってあったのですな。気付いた時には手遅れだったとか。フェルナー准将から聞きました」

「その話は聞いてないな、宇宙艦隊では一言もそんな話は出ていないが……」
キスリングが首を横に振った。
「広域捜査局がその件を伏せて報告しました」
「伏せた?」
今度は頷いた。フェルナーが伏せたのではない、広域捜査局が伏せた。どういうことだ?

「ワーレン提督の暗殺は未然に阻止出来た以上、地球討伐に関しては問題無し、敢えて報告には及ばない、そういう事です」
「馬鹿な、何を考えている。広域捜査局はヴァレンシュタイン司令長官に隠し事をする気か!」
キスリングが無表情に私を見ている。卿はそれを見過ごすというのか、何を考えている、キスリング。

「地球教の件では既に広域捜査局、憲兵隊からかなりの死傷者が出ています。これ以上は司令長官に負担をかけたくないと……」
溜息が出た。
「隠し通せると思っているのか、卿らは。確かにこの問題の責任者は司令長官だ。予想外に死傷者が出ているのも事実、だからと言って……」
最後まで話せなかった。

「地球への潜入捜査は反対するヴァレンシュタイン司令長官をアンスバッハ、フェルナー両准将が強引に説得する形で行われました。結果は司令長官の危惧が当たりました。捜査員は地球教の手先となって帰ってきた。事態が動いたとはいえその事でヴァレンシュタイン司令長官が苦しんでいるのは事実です」
「……」

「その事で広域捜査局が司令長官から責められた事は有りません。そしてワーレン提督の護衛は司令長官からの依頼でした。この件で死者が出たとなれば如何思われるか……、どれほど苦しまれるか……」
「……已むを得まい、頂点に立つ苦しみとはそういう事だ」
泣く事は許されない、その苦しみを他者と分かち合うことも出来ない。頂点に立つ者の苦しみとはそういうものだ。だからこそ頂点に立つ者は周囲から尊崇される。

「彼らもそれは分かっております」
「……」
「だから、せめて何らかの成果が出るまで待
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