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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十話  名簿
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「その全員がある企業グループに所属していた、或いは所属していた過去が有ったのですよ、ホアン委員長」
トリューニヒト、ホアンと顔を見合わせた。二人ともまた厳しい表情をしている。今度はトリューニヒトがホアンに代わってアイランズに問いかけた。

「ある企業グループと言ったな? 一体何処かね?」
「それが、フレアスターグループなのです」
フレアスターグループ? 同盟でもかなり大きな企業グループだ。兵器、家電、金融、化学、物流、様々な分野に進出している。トリューニヒトが私を見ている、気持ちは分かる、例の件が見えてきたのかもしれない。

「偶然だと思うかね」
トリューニヒトの問い掛けにアイランズは首を横に振った。
「その名簿に名前の載っている人間ですが殆どが独居者、或いはここ数年の間に結婚しています」
「……」

少しの間、沈黙が落ちた。アイランズが我々に順に見回した。
「私はその名簿は信者の名簿では無く信者の候補者の一覧だった可能性が有ると思っているのです」
「……」
誰かが唾を飲む音が聞こえた。ホアンか、トリューニヒトか……。

「サイオキシン麻薬を投与すれば当然ですがその人格、行動に変化が生じます。それを知られぬためには……」
「家族との接点の無い人間を選ぶのがベストか……」
「はい」
トリューニヒトが私とホアンを見た。

「どう思う? アイランズ委員長の考えは?」
「有り得るだろうな」
私が答えるとホアンが頷いた。それを見てトリューニヒトも頷く。独居者を中心に信徒を増やしたか、事実なら上手い手を考えたものだ。

「真実が知りたいな、真実が……。もしそれが本当に候補者のリストなら誰がそれを用意したのかという疑問が出る。一企業ならともかくグループとなると……」
「グループ内でもそれなりの影響力を有している人物という事になるな。個人情報を調べたうえで選別したのだ」
トリューニヒトと私の遣り取りに残りの二人も頷いた。

「例の協力者の末裔かな? レベロ、君はどう思う?」
「可能性は有るだろう。フェザーンを作った人間の末裔が地球教に協力していても不思議ではない」
トリューニヒトが頷きながらアイランズに視線を向けた。厳しい表情をしている。

「名簿の作成者を追ってくれ、必ず見つけ出すんだ」
「分かりました。念のため捕殺した教団信徒に他の企業グループとの繋がりが無いか、憲兵隊が今確認しております」
「そうだな、一つだけとは限らんか」
なるほど、可能性は有るだろう。候補者の名簿は一つだけだったとは限らない、他の名簿は破棄された可能性も有る。

「それと行方不明の人間ですが或いは既に信徒になっており地下に潜っているとも考えられます。放置すればテロ活動を行う危険性も有るでしょう。憲兵隊に行方を追わせてい
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