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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の3:狂王の下僕
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、小癪な人間たちから贄を守らなければならないのだ。あれの心の深層では、既に偉大なる主君が支配の力を広げている。遠からず肉体も精神も主君の思うが儘となるだろう。そして己は彼に侍り、道なき道を蹂躙し、この世にもう一度彼の名を轟かせるのだ。そして人間たちに思い起こさせよう。古の存在として追いやられた龍の無念と、怒りを。彼らの犠牲をもって種としての恐怖を与えるのだ。
 手始めに、まずは宮殿の入口で屯する若い人間を殺すとしよう。恐怖に怯える様は見ているだけで堪らないが、それが死によって塗り替えられる様はもっと堪らない。翼を広げよう。そして爪を立てて、あの粗末な肉体を抉り、砕き、潰してしまおう。龍の暴虐を身をもって知らしめてーーー。

「いい獲物がいたものだ。これは調べる価値がある」

 ーーーなんだ?

 突然振りかかった恐ろしいまでの殺意に、龍の降下が鈍くなった。その直後、乱層雲からの稲妻を思わせるような強烈な雷撃が龍の横腹に食らい付いた。濃厚な魔力によって鱗ごと肉が溶けてしまい、龍の身体は遺跡に叩き付けられる。上から降り注ぐ瓦礫に参ったのか、若い人間は慌てて宮殿内へと戻っていった。
 唸りながら龍は身体を起こす。この馬鹿馬鹿しいまでの魔力、生前の主君を彷彿とさせるくらいに精錬され、容赦がない。砲弾ごときでは撃ち抜けないほどに鍛え抜かれた龍の肉体が、僅か一瞬触れただけで溶解するとは。

 ーーー何奴だ。この我を横から殴ってきたのは。

 そう言いたげに龍は言葉にならぬ叫びを吐いた。大地が剥がれてしまうかのような大蛮声を聞いて、その者は余裕たっぷりに姿を現した。

「やはり龍を一撃で仕留めるのは適わなかった。最大限まで魔力を練り込んだのだが、腹が少し融けただけか」
「翼がありません」
「それは元からだ、出来損ないめ。さしずめ人間とやりあって反撃を食らったんだろうよ。長生きの癖に若い連中に油断しおって。・・・まぁ、そんな屈辱も今日で終わりだ。私の魔術の実験台となるのだからな」
 
 その者は、多くの奴隷達に担がれた腰に乗っかり、龍に警戒を生ませるような残忍な笑みを浮かべていた。鳩のような皺くちゃの顔が歪んでいるのは、醜い探求心と興奮によるものだろう。
 龍は再び叫ぶ。貴様を先に食らってやろうと。しかし老人は、小馬鹿にするような笑みを崩さなかった。

「・・・声に魅力を感じられんな。若々しく感じられる。人から見れば老人かもしれんが、なるほど・・・龍から見れば、餓鬼といったところか」

 ーーー図に乗るな。たかが数十年生きた程度の小僧が。

 龍は咆哮し、むくりと身体を起き上がらせると憎き人間に向かって邁進していく。血を這う蜥蜴のようにのしのしと足を動かし、立ちふさがる瓦礫をものの見事に粉砕していく。自分の魔力に自信があるの
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