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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の2:邂逅、再び
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を呟きやがって。キチガイめ。そんなんだからお前は、仲間を何とも思わずに傷つけられるんだ。さっき爆発か何かが起きた時、あいつを安全な所に避難させてなかっただろう?」
「ん?ああ、アダン殿か。彼は最後まで立派に役に立ってくれたよ?道中、私が駆除しきれなかった無法者や獣は、彼が率先して狩ってくれた。雇われのドワーフにしては随分と義理深いやつだった。だが、もう用済みだ。勝手に処分してくれたまえ」

 慧卓は信じられぬ思いを抱く。ここまで連れ添った仲間をよくも簡単に捨てられるものだ。人としての良心が微塵たりとも感じられない。それに狂王の秘宝を手にした今、放置しておくのは余りに危険過ぎる。
 凛として剣の切っ先を向けながら、慧卓は宣告した。

「チェスター・ザ・ソード。お前の思想は危険すぎる。生かせばいつか王国に仇をなす。今ここで、騎士の誇りにかけてお前を成敗する。それが俺の為すべき事だ」
「・・・餓鬼風情がよく言えたものだ。魔術のいろはも知らんくせに。・・・よかろう!この力を試すには持って来いの機会だ。騎士道の精神に則ってやろう。フェアプレイが大好きだからな。・・・そういえば、あいつは魔道杖が使えたな・・・?」

 ーーー魔道杖は魔力の無い者には反応を示さない。ならばあいつには・・・。

 聖鐘の時の慧卓を思い出すと、チェスターは床に転がっていた、嘗ての所有物を蹴り付ける。それはからからと転がり、慧卓から数歩の所で止まった。チェスターが使用していた魔道杖であった。

「私のお古をくれてやる。君になら、きっと使える代物だからな」
「・・・舐めるなよ?俺はこんなものがなくても、コイツでお前を倒せる」
「遠慮するな。私が使えと言っているのだ、使いたまえ。でなければ・・・あそこに立っている君の仲間を殺すぞ?」
「ッッ!!」

 咄嗟に背後を振り返る。広間の正しい入口であろう大門から、リコが広間へと入らんとしていた。身体中に傷が目立つがそれらは奇跡的にも軽傷に留まっているようで、安堵を覚えたい所だ。だが今はそれどころではない。
 慧卓が目前の杖に向かって走るのと同時に、チェスターが大振りに錫杖を振り被った。遊環に支えられるように紅の光が宿る。

「きっひ、丸焼きぃ!!」

 奇声と共に杖を振るった。馬車ほどもありそうな特大の火球が生まれ、猛スピードでリコへと迫らんとする。しかしそれは直下からの別の火球を受けて変形し、爆炎を上げて立ち消えとなってしまった。
 チェスターは喜ばしげに干渉の正体、魔道杖を構えた慧卓を見詰めた。

「やはり使えたな?思った通りだ。君には、魔法の素地と才能がある!」
「・・・リコっ!!そこのデカイ人を安全な所へ運べ!ここはすぐに危険になる!!」
「で、でも、ケイタクさん!僕だって・・・」
「いいか
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