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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の2:邂逅、再び
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「・・・こいつは・・・」
「久しぶりだな。若き騎士殿」

 懐かしき声に警戒心が一気に湧く。煙が不自然なまでに一気に晴れ渡って声の主が現れた。跡形もなく吹き飛んだ台座の上に佇むのは、荘厳な黒い錫杖を握り、災禍の直後のようだくすんだ衣服を纏う、チェスターであった。左の頬にはまるで血涙の痕のようなものが走り、それが熱によって乾かされて獰猛な戦化粧のようにも見えなくは無かった。
 地形の破壊ぶりを見るに、おそらく彼が立っている場所こそが爆心地なのだろう。にも関わらずあの悠々たる様は一体どういう訳か。

「・・・チェスター・・・何をやったんだ?」
「おや、私の名前を知っていたとは。自分から名乗った覚えはないのだがな?」
「・・・こっちでは有名だよ。碌でもない教会嫌いの御尋ね者としてね」
「そうか・・・では改めて名乗るとしようか。私の名はチェスター・ザ・ソード。王国のあるべき姿を取り戻さんと理想を燃やしていたが・・・そんな事はもうどうでもいい。今の私は狂王の忠実な僕だ」
「遂に頭がイかれたか?狂王はとっくのとうに死んでる。っていうか狂王って、何百年前にいたかどうかも分からない、ただの御伽噺だろう?」
「それがなぁ、実際に存在していたのだよ。この宝具がその証明だ」

 彼はそう言って誇らしげに自分の左目を指差した。よくよく見ると、そこに嵌っていたのは親より授かりし唯一無二の瞳では無く、異形の紫の瞳であった。

「お前・・・その目は・・・」
「ああッ!義眼だよ!狂王お墨付きの逸品さ!『セラム』有数のアーティファクトといってもいいだろう!君達もこれを求めていたようだが、一足遅かったな。これはもう私の手中にある。そしてこれこそが、私の新しい理念であり、新しい『主君』だ」
「・・・お前、本当にイかれたのか?頭とか打ったんじゃないだろうな?」
「いやいや、私は正常だ。なぜなら私は正常だからだ。ンっんー、マーベラスな気分だよ。・・・それにしても、私は想像以上に魔術の才能を持て余していたようだな。この眼の御蔭で世界が新しく見えるよ・・・。今まで感じれなかった、透明な血潮のようなものも感じる」

 狂言染みた口振りをしながら、チェスターは不意に慧卓を見下ろすとにやりと嗤った。

「嗚呼・・・君、何かの契約を結んでいるのだね?魔術による契約を」
「ッ!?」
「くっく、狼狽えるな。その程度の魔力の繋がりなどすぐに見破れる。弱者と弱者の繋がりなどな。・・・いや、それにしては存外大きな流れだ。ただの契約にしては魔力が強すぎる。それになんだ?魔術の流れに何か大きな、光のようなものが絡んでいる・・・。これは、なぜだ、何か近しいものを感じるのだが・・・どうにも思い出せない。何か大事なものが欠けている気が・・・」
「・・・ぶつぶつと分からない事
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