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王道を走れば:幻想にて
第五章、その1の2:邂逅、再び
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るように変形して、次の瞬間には義眼の圧力によって眼孔の中で爆ぜた。水晶が混濁した血みどろの歓迎を受けて、義眼はチェスターの身体に収まった。
 それがすべての始まりであるかのように、結界が一段と強く、まるで爆炎を吹くかのように弾け飛んだ。天地が逆さまになる閃光に意識を呑まれながら、アダンは両出を広げて仁王立ちするチェスターを見て、身体を焼く鋭い熱を感じた。


ーーー遺跡の上階、ゴンドラにてーーー


 慧卓は薄暗い吹き抜けの階層を、ゴンドラと共に降っていた。がらがらと滑車の鳴る音に耳を傾けながらリコを心配していた、まさにその時である。突然、下層の方で強烈な爆発音が轟いたかと思えば遺跡全体を揺るがし、ゴンドラが急停止したのだ。

「なっ、なんだってんだ・・・一体?」

 返答の代わりに、上層の方で嫌な音が聞こえた。それは『きぃ』という、聞き違えでなければ滑車が緩むような音であった。心なしかゴンドラも僅かに傾いている気がする。

 ーーーえ?え、え?ちょ、おまっ・・・。

 引き攣った息を漏らした直後、遂に、そして呆気なく、ゴンドラを繋ぎとめていたであろう滑車が崩れゴンドラは自然落下していく。尻が竦むような奇妙な浮遊感と、風景が一瞬で過ぎ去っていく爽快感は、『現代』の絶叫マシンに通ずるものがあった。しかし命綱が無いという一点が精嚢をひゅんと縮めさせる思いを沸かせる。慧卓はゴンドラに尻もちをついたまま、ただ為すがままに落下の感覚を味わっていた。
 幾秒か経った時、眼前の光景が明るいものとなり、視界に光が差しこんだ。目をぎゅっと細めて何があるのか見ようとしたが、それより早くゴンドラが床に激突した。慧卓は背負っていたナップザックを潰しながらゴンドラの床にぶつかり、跳ねるように前に転げ出された。ゴンドラの上に滑車が降りてきて、ばらばらに壊れてしまった。

「いぃっつ・・・うそ・・・俺まだ生きてる・・・」

 自身でも信じられぬ幸運に驚かされながら、慧卓は身体を走る痛みに耐えつつ起き上がる。一体何が起こったのか、辺りが爆炎に飲まれたように噴煙を被り、石壁にはっきりとした焦げ目がついていた。広間の奥の方では黒煙が立ち込めている事から、爆発が起こったのは間違いがないようだ。噎せるような匂いと共に、慧卓は心臓に刺すような直感を感じる。咄嗟にガントレット越しに左手の指輪を触れたのは、何も無意識によるものだけではなかった。何か恐ろしいものが黒煙の向こう側に待ち受けているような気がするのである。
 いつになく緊張を覚え、慧卓は深く息を整えてから抜剣し、油断なく煙の方へと歩んでいく。しかし数歩したところでその歩は急に止まった。足下に大きな人影が見えたのだ。調べるとそれは体格のいいドワーフで、全身に火傷のような赤黒い斑点を作っているのが分かった。
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