第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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ないが……。
何も出来ない自分を不甲斐なく思いながら、士郎はせめて楽しませようと努力したかいもあって、離れる頃にはカトレアは満面の笑みを浮かべていた。
……後が色々と怖いが……。
そして今、色々あった士郎の胸の中には一人の女性の姿があった。
「そう、みんな見つかったの」
「ああ。ルイズで最後だ」
同じ桃色の髪を持つ、しかし背が高く優しげな空気を身にまとった姿は、ルイズとは違う。ルイズが変身したのは姉のカトレアであった。
「ふ〜ん……わたしが最後……か。でも、本当にそうなのかな?」
曲が終わり士郎の胸から離れたカトレアの姿のルイズは、背中に両手を組んだ姿でくるりとホールを見渡す。
「あと一人残っているんじゃない?」
パチリとウインクしたルイズが、士郎に背中を向け歩き出していく。
一人残された士郎が、顎に手を当てルイズと同じようにぐるりとホールを見回した。
「ふむ、どうやらルイズの言う通りのようだな」
ある一点でピタリと視線が止まると、士郎はゆっくりと目的に向かって歩き出した。
「お嬢さま。お一つ如何でしょうか」
「えっ?」
聞き覚えがある声に、アンリエッタは顔を上げる。
視線の先には、アンリエッタの予想通りの人物の姿あった。グラスを両手に持った士郎の姿をした人物が、右手に持ったグラスを差し出してきている。一瞬顔に喜色が浮かびそうになったが、直ぐに、それを打ち消してアンリエッタは小さく笑うと差し出されたグラスを受け取った。
「ありがとうございます。ところであなたは?」
「ふむ。そんなに俺の顔は見ないうちに変わったかなアン?」
「ッ!! シロウさ―――んむ!?」
顔を撫でて笑いながら士郎が口にした最後の部分を耳にしたアンリエッタが、咄嗟に大声を上げそうになったが、咄嗟に口を抑えられ大事には至ることはなかった。
「し、シロウさんですか? 『真実の鏡』を利用していないのですか?」
「ああ。アンリエッタはルイズに変わったのか」
「ええ。見ての通りです」
口を抑える士郎の手をゆっくりと外したアンリエッタは、赤くなった顔で自分の身体を見下ろす。その身体は何時もの自分の体ではなく、一番の友人のものであった。
「ここは騒がしいな。ベランダに行かないか?」
「え? あ、はい」
「こっちだ」
士郎はアンリエッタの手を取ると、すいすいと人の隙間を縫うように歩きベランダへと向かう。
どうやら運がいいことにベランダを利用するものはおらず、貸切状態であった。
士郎はアンリエッタの手を放すと身体を回し向かい合う。
「少しは気晴らしになっているか?」
「え?」
向かい合ったまま、暫くの間じっと黙り込んでい
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