第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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ドの奥に見える口を笑みの形にした女は、タバサの隣に座ると小さく頭を下げた。
タバサも返事として小さく頷くと、ポツリと口を開く。
「何故」
たった一言であるが、フードを被る女はその質問の意味を正確に受け取った。
「ここが任務の舞台ですから、手間を省いたのよ」
スッとタバサの目が細まる。
タバサの警戒を感じたのか、女は楽しげに口元に浮かべた笑みを深めると、深く被ったフードを微かにずらした。
ずれたフードの中に見える顔を、もしこの場にルイズがいれば驚愕の声を上げていただろう。店内の明かりに照らされ光る黒髪の間には、ルーン文字が走っていた。
神の頭脳ミョズニルトン。
士郎と同じ虚無の使い魔の一人がここにいた。
「あなたとわたしの主である御方はね、今あるゲームをしようとしているの。この世界にたった四匹しかいない竜。その竜同士を戦わせるというゲーム。だけどね、その内の一匹にはとても手強い騎士がいて、主さまはそれを何とかしたい。だから、あなたにはその騎士をやっつけてもらいたいの。あなたが相手をしているうちに、わたしはその騎士の弱点でもある竜を手に入れる」
「騎士を倒せばいいだけ?」
「そう、あなたも知っているんじゃないかしら? 最近随分と有名になっているようだしね」
ミョズニルトンが取り出した一枚の紙をタバサの見せた。
その紙に描かれた人物と名前を見たタバサの身体が揺れる。
ガタンっ! と椅子が大きな音を響かせた。
「騎士は手強いから、この任務を成功させれば、主さまはあなたに特別な報酬を与えると言っていたわ」
動揺が隠せないタバサを、ニヤニヤとした笑みが浮かべた口で見下ろすミョズニルトン。
「あなたの母親、あなたを守るため毒をあおって今、心を病んでいるそうね……その心を取り戻す薬よ」
その言葉による反応は劇的であった。雪風と呼ばれる少女の瞳から、凍てついた氷の矢のような視線がミョズニルトンに向かって飛ぶ。あまりの怒りと憎しみのため、震えさえ収まっていた。
「母親の心を取り戻したければ―――」
ミョズニルトンはその赤い唇をぺろりと舌で舐め濡らすと、笑みの形に歪ませた。
「―――エミヤシロウを殺しなさい」
時は流れ、スレイプニィルの舞踏会が開かれる虚無の曜日。
魔法学院の生徒たちは、間もなく始まる舞踏会に期待を胸に膨らませていた。朝食の席で、生徒たちは近くの者と誰に仮装するかという話で笑い合っている。
そんな周りの声を聞きながら、士郎が朝食を取っていると、
「シロウ、食事が終わったらわたしの部屋に来て」
「ん? どうかしたか?」
テーブルを挟んだ向かいに座るルイズが話しかけてきた。
「今日のス
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