第九章 双月の舞踏会
第七話 スレイプニィルの舞踏会
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「スレイプニィルの舞踏会?」
早朝訓練が終わり、涙目で腕に包帯を巻いているマリコルヌに士郎は聞き返す。
「そうだよ。もちろん隊長も参加するんだろ?」
「いや、その前にその『スレイプニィルの舞踏会』というのを知らないんだが?」
泥だらけで痣だらけの身体に包帯を巻き終えたマリコルヌが、よいしょと立ち上がると首を傾げた。
「ああそっか、隊長は知らないよね。スレイプニィルの舞踏会っていうのは、この間入学してきた新入生の歓迎会のことだよ」
「ああ、初めて見る顔が増えたと思っていたら、新入生だったのか」
「そうそう、で、新入生はまだ社交界を経験してない女の子ばかりだからね。ぼくたち先輩がこれを手とり足取り教えてあげるのだよ」
同じように一人で器用に包帯を巻き終えたギーシュが立ち上がると、にやにやといやらしい笑いを浮かべる。
士郎との訓練は厳しく。ギーシュたちが自由に魔法を使える代わりに、士郎が振るわれる木刀は寸止めされることなく容赦なく身体を叩いていた。もちろん士郎なりに手加減はしているが、それは大怪我をしない程度の手加減であり、当たれば青痣が必ずといっていいほど出来てしまう。一度の訓練で、全員もれなくボコボコにされるため、今となっては皆、ある程度までなら一人で治療できるようになっていた。
「あまり派手にやると、またモンモランシーからお仕置きされるぞ」
「うっ、だ、大丈夫だよ。彼女はぼくに惚れているからね。う、浮気も男の甲斐性と言うし」
「この間浮気がバレて治療してもらえなくなったと泣きついていたのは何処の誰だったか」
ギーシュの恋人であるモンモランシーは水の使い手であるため、痣程度なら直ぐに治すことは可能である。事実少し前までなら、ギーシュは訓練を終える毎にモンモランシーの元まで飛んでいき、治療をしてもらっていた。モンモランシーも治療代をもらうわよ等と言いながら、何処か嬉しそうに治療していたところを士郎は何度か見かけたことがある。しかし、最近何時もの如くギーシュの浮気がバレてしまったようで、モンモランシーから治療を拒否られているため、今は一人寂しく自分で治療する羽目になっていた。士郎の記憶では、モンモランシー以外の水の使い手の女の子とも仲が良かった筈だが、ギーシュにその子に治療してもらおうという様子は見えない。そんなギーシュが何処か微笑ましく、士郎は今度それとなくモンモランシーにそのことを伝えようかと考えていたが、
「もう少し様子を見るか」
あまり応えていないようなので、もう少し様子を見ることにした。
「こ、今回は大丈夫さ。スレイプニィルはただの舞踏会じゃないからね」
「ただの舞踏会じゃない? 何だ馬に乗って参加でもするのか?」
「馬? 何を言っているんだいシロウ? 仮装するんだよ
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