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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第二十話 オペレーション・マルス@
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、戦うべき場所もある坂本さんに魔法力が無くて、帰る場所も戦うべき理由もないわたしは魔法力があるなんて……」
「沖田……泣いているのか――?」
「こんなのあんまりですよ……!! もしできるなら、坂本少佐がわたしの魔法力を全部吸い取っちゃえばいいんですよ……っ!!」

 できるわけがないと知っていながら、和音はそんな事を言った。
 肩を震わせて俯く和音を見て何を思ったか、坂本は己の掌を見つめ、そして何かを悟ったような表情になった。

「ああ――そうだな。ようやく、ようやく分かった」
「…………?」
「どんなに悔しくても、どんなに悲しくても、先生たち先達のウィッチがどうして翼を捨てられたのか」

 まだほんのり温かい砂に手を埋めて坂本は言う。

「翼を捨てるんじゃない。託すんだ。これからの時代を担う誰かに、自分の翼を託すんだ。だから、胸を張って空から降りられる」

 刀に突いた砂を払って立ち上がった坂本は、和音の方を見ずに言った。

「――なあ、沖田」
「はい……」


「――この戦いが終わったら、一緒に扶桑に来ないか?」


 その言葉に、和音は胸の奥がかき乱されるような激しい動揺を覚えた。
 願ってもいないその言葉は、しかし和音にとってはある種の死をも意味するものだから。

「お前の言葉を聞いて思った。傍にいてくれた、帰りを待っていてくれる人こそが居場所なのならば、わたしがお前の居場所になる。501が解散したら、宮藤と一緒に扶桑へ戻ろう」
「坂本少佐……」
「横須賀でも、舞鶴でも、どこでもいい。そこで――」

 その先を口にしようとして、坂本はハッとしたように口元を抑えた。
 その言葉は、絶対に口にしていけないと気がついたから。

「あはは……わたしには、できないですよ坂本少佐。わたしの生きる場所は、手の届かないずっと先にありますから」

 ――そこで生きればいい
 そう言おうとして、言ってはならないことに気がついた。言ってしまえば、それは和音の帰る場所も、護りたい人も、全てを見捨てろというのに等しいからだ。この時代に、この501以外に本当の意味での居場所がないことを、坂本も認めざるを得なかった。

 だからこそ、坂本は譲らなかった。

「――沖田、すこし目を瞑れ」
「……? はい」

 一瞬怪訝そうになるも、和音は大人しく目を閉じた。坂本はその両手を取ると、そこにある物を握らせる。

「これをお前に預ける。50年後、かならずわたしに返しに来い」
「これは……!! いけません坂本少佐!! だってこれは!!」
「いいんだ。いつかのわたしも、そうやって師から愛刀を譲り受けた」

 坂本が握らせたのは、自らの魂ともいうべき愛刀『烈風丸』だった。
 
「なあ沖田。こ
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