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探し求めてエデンの檻
1-2話
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いもので…切ないもので…忘がたいもの……。
 男の子のそれは、無意識の表面上に現れる程度のものだけど…あれと似た『(輝き)』をずっと探し求めているからわかる。

 過去にその目をしていた者は歪みだった。
 ならば、アタシの前にいるこの子は―――?

「あ…―――」

 男の子は何か言いかけようとした。

 だが…それが紡がれる前に―――。

「っ―――」

 足元が浮いた。

「っ、あ…!!」

 アタシ達の、視線の邂逅(かいこう)を遮るように浮遊感が不意を衝いてきた。
 それと同時に、旅客機を“上下”に揺らすような激しい振動が襲う。

 これは…先ほどのモノとは違う境界の一線を越えた瞬間だった。

「ギャアアァァーッ!!」
「イ、ヤアァァァァ!」
「落ちてるッ! 落ちてるよっー!!」
「助けて! 誰か、助けてぇっ!!」

 誰もがこの現象を直感的に悟っただろう。
 視覚に寄らずにも、体が感じる異常が否応なく連想させる。
 自重が不安定なほど軽くなり、重力に引っ張られながらも下へと流され落ちるようなこの体感は…墜落。

 それはつまり―――。

 巨大な鉄の塊が空を飛翔するほどの力が…重力に逆らって宙に留まらせるはずのその均衡(きんこう)が―――崩れたのだ。

 落ちていく。

 遥か上空から地上へと叩きつけられる…あまりにも単純な死の形。
 突き付けられるイメージに、人々は恐れ戦く感情一色に染まった。
 耳が痛くなるような数と音量の悲鳴が多重奏となって響く。


 もはや、一刻に猶予もなかった。

「―――!」

 少年の事は頭から追い出し、翻して弾けるように駆け出した。
 体は可能な限り低く這い、足だけでなく、手をも使って四肢を操って俊敏な獣のように動く。

 入り組んだ茨のように乗客の間を縫えば、そこには非常口があった。
 通常ならこの状況で開くべきない扉。
 たしか、これが開くと一緒になって滑り台のバルーンが展張するというものだったが…構う事はなかった。

 操作すると、重厚な開閉音はしなかった。
 耳がつんざくような風音によってかき消されたからだ。

「くっ…」

 機内の空気が吐き出されるような気流に、不安定な足元から吹き飛ばされてしまいそうになる。
 思いの外、浮遊感を相手にしながらだと姿勢制御もままならない。
 前髪も暴れるようにはためいて目を開けるのを妨げる。

「―――、――」

 心を落ち着かせ、繋がった外気にアタシは身を任せた。
 そして、意識を伸ばす。

 意識を宙に…いや、隙間なく満たす外界へと浸透させる。

 意識は空気へ、大気へ、空へと…天空へと、その領域を広大なほどに展開する。

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