36部分:第三幕その十三
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知らないふりをするのだった。その素振りのまま笑うだけだ。
「それにしても伯爵様も」
「ええ」
「ナルシスは今上機嫌ってわけだ」
「それではだ」
伯爵は手紙をこっそりとしまうと式が終わったのを見届けたうえで皆に対して告げた。
「今宵は私がもてなさせてもらおう」
「おおっ」
「流石伯爵様」
「やっぱり気前がいい」
彼は気前のいい領主としても有名なのである。何だかんだと言って中々いい領主として知られている。少なくとも愚かでも邪でもないのは間違いない。ただ女好きの傾向があるだけだ。それだけである。
「絢爛豪華な婚礼の祝宴を用意しておいた。歌に花火」
まず箱の二つだった。
「美酒に美食、舞踏会」
どれも贅沢とされるものである。
「皆私のもてなしを受けてくれ。さあ、皆でな」
「はい、是非共」
「皆、伯爵様のもてなしを受けよう」
「ああ、是非共な」
こうして皆伯爵をたたえるのだった。その中で伯爵とスザンナは目を合わせて笑い合っていた。だが伯爵はここでは気付かなかった。スザンナはそれよりも前に、それよりも後にも彼女と目を合わせて目だけで笑い合っていたことを。それには気付かなかったのだった。
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