例えばこんな命令は正直聞かなかったことにしたい
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と自慢する気も起きないが、狼人間にとってはこれくらい割り箸を割るのと大して変わらない。
「なっ!?貴様、本当に人間か・・・!?」
「もう一つ教えておく。私の任務は真田の護衛だ。お前が真田に手を出さないなら話はそれまでだ」
「・・・それを信じろと?」
「調子に乗るのもその辺にしておけ。でないと”下水道の鰐に齧られるぞ”?」
「!!!」
話はそこで終わった。これ以上付き合う義理もないだろう。それにあいつ自身もなぜ軍が自分をここに送り込んだかは考えていない様だ。
6月12日
生臭い臭いが鼻腔をついた。この臭いは・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・かなり強引だったが、予期せずして真田の遺伝子情報を入手できた。何故か泣きたい気分になった。涙は出なかったが。
ボーデヴィッヒがやたらツンケンしている。周囲に合わせるのが馬鹿馬鹿しいのは分かるが、そこは適当に愛想を振りまいて都合のいい時に利用するのがこういう時の定石だ。見ていられないので潜入工作時の身の振り方のイロハを教えてやった。・・・話せば話すほどこいつはコミュニケーション能力が壊滅的すぎる。こいつの教育係出てこい。え?織斑先生?じゃぁしょうがない。あの人多分口下手だから。
あれもダメ、その考えも違うと順序立てて説明しているうちにボーデヴィッヒが泣き始めてしまった。実は織斑先生にもそのコミュ障具合を怒られたらしく、得体の知れない勢力の人間にまで指摘されて情けないやら悔しいやらで耐えられなくなったようだ。皆の目がある中で泣き始めるものだから私が泣かせたようになっている。唯でさえ真田との関係を大分怪しまれているのにこれ以上注目を浴びるのは面倒なので持てる限りの知識を総動員してボーデヴィッヒをあやすことにした。
いくら厳しい訓練を受けても孤独だけは耐え難かったのか、私の胸に縋りつくように顔をうずめたボーデヴィッヒはそのまま泣き疲れて眠ってしまった。こいつもひょっとして、私のように居場所を求めていたのかもしれないと思うと憎むに憎めない。
こらそこ、「お母さんみたい」とか言うな。お前ら知らんだろうが私の方が2歳年下なんだぞ。
疲れ果てて寮に戻ったら今度は真田だ。突然シャルロットと織斑の部屋に突入したかと思ったらシャルロットの持っている通信機を断りもなく奪い取った。通信相手が誰かは想像がつくが、あそこまで激昂した真田を見たのは初めてである。変な話だが、真田も人間なんだなと思った。家庭の事情があるから余計にその手の話には敏感なのだろう。
シャルロットは泣きながら小さな声で「ありがとう」を連呼していた。そのあと織斑に勧められて父親と改めて話をしていたが・・・なんとなく結果は分かるのでその場を後に
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