第二十九話 運命と可能性
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今までの自分を覆すかのような発言。しかし、一度人の可能性を見てしまったら、その可能性を信じてしまいたくなるのだ。
「彼だけではない。可能性を殺さず新たな可能性の元に己の格を超えた人間は多数いる。サハクを、そして多くの他者を変えていったロウ・ギュール、一族にすら認めさせたジェス・リブル、遺伝子に逆らい成功させたマーシャン――――――私は見ていないだけで、多くの可能性を見逃してきたのだ。君は、ジョージ・グレンがコーディネーターのことを提唱した本当の理由を知っているかね?」
『人の今と未来の間に立つ者、調整者、コーディネイター―――しかし、多くの人はそれを理解せぬまま生きていく。故に私のようなものが産まれ、世界を憎み、戦争が起こることとなった』
「そういうことだ。そして人の今と未来―――これが何を指すかわかるか?」
遺伝子に変化は見られなかった。しかし、明確な変化を齎された存在。かつてクラウが冗談まじりに呟いた一言、ニュータイプ。
「ジョージ・グレンは実に半世紀近くも前からこれを予期していたと言うことだ」
『ならばどうする?原初のコーディネーターの使命に従って可能性に賭けるのか?』
どのような行いをするのが最も正しいのか?ニュータイプの存在を予期していたジョージ・グレンの彼の使命に従うのが、最も信頼できるのかもしれない。しかし、果たしてジョージ・グレンの描いた未来が正しき道だと誰が言える?自らがその生涯を賭けてまで得たデスティニープランこそが自らの目的の為に考えたこれこそが己にとってはある意味正しいのかもしれない。
「やはり、決まっているか……」
『そうだろうさ、結局人は己しか信じられず、己しか知りえない』
「ああ、そうなのだろうな。故に私はデスティニープランを実現させる。これを止める事すら出来ないのなら、それこそニュータイプに意味などないだろう?」
『そうか、君がそれを選ぶと言うなら――――――』
そこで目が覚める。ガラスのチェスを眺めながら情報を整理していたら、いつの間にか転寝をしていたようだ。
「ラウ……君と私の運命を終わらせるときが来たのかもしれないな……」
最後まで彼に味方はいなかった。レイは彼と同一人物であり、私はあくまでも共犯者に過ぎない。彼が、私よりも先にクラウ・ハーケン―――君に出会っていたなら彼の運命は変わっていたのだろうか?
ありえもしないIFに考えをよぎらせる。そうなれば私も彼もこんな壮大な夢を持たず、平凡に生きていたのかもしれない。或いは今以上に大きな大望を懐いたままに溺死したかもしれない。
「本当に、君はどういう駒になるのだろうな……」
盤面のチェスを眺める。普通の盤面とは違い、三種の駒が争いあう。白のナイトにはルークとビジョップが、
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