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至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十 〜尋問〜
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中にあった、水桶を手にする。
 そして、縛り上げたままの男達に浴びせかけた。
「……はっ?」
「こ、此処は?」
「く、くそっ、縄が解けん!」
 身動きが取れないとわかったのか、男達は私を睨み付ける。
「このような真似をして、ただで済むと思うか?」
「はて。先に剣を抜いたのは貴様らであろう? 己の身を守るため、当然の処置を執ったまで」
「黙れ! おい、今すぐ我々を解放しろ! さもなくば、後悔する事になるぞ!」
「意味がわからぬな。貴様ら、誰に頼まれたのだ?」
 その問いには、答える素振りは見せぬ。
 あれだけ啖呵を切っておきながら、肝心な事は言わぬつもりらしい。
 私は、男達に聞こえぬよう、疾風に耳打ちする。
「稟と風、星を此処に連れて参れ。急ぎでだ」
「ですが、尋問は如何なさいます?」
「それは、私一人で十分だ。それに、尋問には手慣れている」
「……そうですか。では、あの貂蝉とか申す者に、途中までの道案内を頼むしかありますまい。私も、此所の正確な位置が把握できていませぬ」
「わかった。では、頼むとしよう」
 疾風は顔を引き攣らせながらも、貂蝉と共に宿舎へと向かった。
 それを見送ると、私は再び男らに向き合う。
「さて。まだ話す気にはならぬか?」
「…………」
「後悔する、と言ったがどういう意味だ? 貴様らの黒幕は、それだけの実力者、という事だな?」
「…………」
 黙り、か。
 だが、私を甘く見たな。
 手荒な真似ならば、新撰組では日常茶飯事。
 不穏な動きを見せる尊攘の者共は、捕らえても生半可な拷問には耐え抜く者も少なくない。
 奉行所や所司代では、捕縛する人数の割には成果が上がらぬ、そんな話はよく伝え聞いていた。
 その点、新撰組は容赦というものがなかった。
 手ぬるい尋問、という事を想像しているのだろうが、あの頃の事を思えばその必要もあるまい。
 ……ただ、あまり疾風には見せたくない、それ故に体よく去らせたのもある。
 卑弥呼に頼み、古釘と竹串、それに蝋燭を借りた。
 蝋燭が、何故か赤いのが気になるが……まぁ、良かろう。
 それを見た男達の顔に、恐怖が走る。
「な、何をする気だ?」
「話す気がないのであれば、話したくなるようにするまでの事。その為の準備だ」
「よ、止せ! そんな事をしても無駄だぜ? ど、どうせ脅しに決まっている!」
「そ、そうだよな。こんな優男に、そんな真似出来る筈……ギャァァァッ!」
 腕を折った男が、叫び声を上げる。
 折れた箇所を、思い切り踏み付けたからだ。
「どうした? 所詮脅ししか出来ぬ奴、そう申したではないか」
「て、てめぇ! それでも人間か!」
「ほう? 人様に剣を向けた事は棚に上げて、か? 貴様らのような外道に、かける情けなどない」

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