暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十 〜尋問〜
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を切った。
「いけずねん、こんな漢女(おとめ)相手に」
 身をくねらせる貂蝉は、敢えて無視で良かろう。
「疾風、荷車と人足を手配してくれぬか?」
「この者達を運ぶのですな?」
「ああ。それから、近くに空き屋がないかどうかも」
「では、直ちに手筈を整えます」
「ちょっと待って欲しいのねん」
 そこに、貂蝉が割り込んできた。
「何だ?」
「運ぶのはこの一人だけかしらん?」
「いや、他に二人。理由はどうあれ、我らを襲ったのだ。それを問い質さねばならぬのでな」
「なら、いい場所があるわよん。それと、三人ぐらいなら私が運んであげるわよん」
「運ぶだと?」
「そうよん。任せて貰えるかしらん?」
 ふむ。
 見た目は面妖だが、どうやら悪人ではなさそうだな。
 少なくとも、眼にはやましいところは感じられぬ。
「良かろう。だが、目を覚まされると厄介だ。それに、人に見つかっても拙い」
「任せて欲しいのねん」
 そう言うと、貂蝉は軽々と男を持ち上げた。
「な、何と言う力だ……」
 疾風が呆れるのも、無理はないな。


 貂蝉の異形の相が幸いしたのか、男を三人まとめて担いだその姿も、誰にも咎め立てされなかった。
「まさか、三人まとめてとは」
 呆れ果てる疾風。
「あれは規格外だ。星や愛紗は無論だが、恋でも相手となるとかなり手を焼くだろう」
「……敵に回したくない相手です。いろんな意味で」
「……同意だ」
「さ、着いたのねん」
 我々の思考などお構いなしに、貂蝉は一軒の家にずんずんと入っていく。
 やや古びてはいるが、庶人の家ではなさそうだ。
「疾風。見覚えはあるか?」
「さて……。少なくとも、私が務めていた自分の官吏や商人にはとんと心当たりがありませぬ」
 想像を巡らせていると、中から人が出てきた。
「む? 貂蝉、客人か?」
「あら。そうよん、なかなかいい男だと思わない?」
「ほほぉ。これはこれは……。おっと、失礼。儂は卑弥呼と申す」
 卑弥呼……だと?
 邪馬台国を率いていたという、伝説の女王の事か?
 ……しかも、貂蝉と同じ、下履きだけの出で立ち。
 類は友を呼ぶ、と言う訳か。
「……拙者は土方。此方は徐晃だ」
「む、土方殿に徐晃殿。……なるほど、貴殿らがのう」
 意味深に、一人頷く卑弥呼。
「貂蝉、先にその者どもを尋問したいのだが」
「わかってるわん。卑弥呼、中を借りるわねん」
「むむ、良かろう。だぁりんも出ておるでな」

 そして、卑弥呼は屋敷の一室に、男達を下ろした。
「じゃ、ごゆっくりねん」
 そのまま、部屋を出て行った。
「歳三殿。……本当に、宜しいのでしょうか?」
「……わからぬ。ただ、今は刻が惜しい。奴を信用するよりあるまい」
「……は」
 部屋の
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