第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十 〜尋問〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
三十間前後。
正確に狙うとなれば、更に近寄らねばなるまい。
達人になれば更に伸びる事もあろうが、そこまでの相手とは考えにくい。
……と。
「うぎゃぁぁぁぁぁっ!」
すぐ先から、不意に絶叫が上がった。
「歳三殿」
「うむ」
疾風と二人、その方角へと駆けた。
「く、来るな、この変態化け物め!」
「誰が見ると三日三晩悪夢に魘される変態かつ不気味な化け物ですってぇ?」
「そ、そこまで言ってねぇだろ!」
全身筋肉で、何故か下履きだけを来た大男が、弓を手にした男に迫っている。
「この私の美しさがわからないだなんて、おしおきよん?」
「や、やめろぉぉぉっ!」
「……歳三殿。あれは一体、何なんでしょうか……?」
「……わからぬ」
その間に、筋肉男が、弓の男を畳んでしまったらしい。
「あ〜ら、だらしがないわねぇ。あら、こっちは素敵な美形ねん」
振り向いた大男は、異形の相をしていた。
弁髪、としか例えようのない髪型に、女子のような仕草が何とも不釣り合いだ。
「……何者だ?」
「私? 私はねん、貂蝉。都で評判の踊り子よん」
貂蝉、だと?
女子ばかりの世だという事には違和感を抱かなくなったが、絶世の美女、と謳われた貂蝉は男。
……しかも、このような異形の相とは。
「い、偽りを申すな! そなたのような者など、聞いた事がないわ!」
うむ、疾風が珍しく狼狽えているな。
「あらん? 私を知らないだなんて、モグリよん? そういう貴女は何方?」
「私か? 私は徐公明、少し前まで都で官職にあった者だ」
「徐晃ちゃん?……という事は、こっちのハンサムな御方は?」
「私は、土方と申す」
名乗りを上げると、貂蝉は何故か感激したような顔をした。
「やっぱり、あの土方さんだったのねん。噂には聞いていたけど、本当に素敵なのねん」
そう言いながら抱き付いてこようとしたので、咄嗟に飛び退く。
「何をする? 私は、衆道の嗜みはないぞ?」
「いけずなのねん。でも、そんな貴方もス・テ・キ♪」
「お前の趣味などどうでも良い。それよりもこの男だが」
気を失ったまま、目が覚める様子もない。
「人気のない場所でこそこそと弓を使っていたから、声をかけただけなのねん。それなのに、変態とか化け物とか、酷いわ酷いわ!」
……なるほど。
しかし、このような出で立ちの者が声をかければ、慌てふためいても仕方なかろうが。
「この者は、私を狙っていたらしいのだ。どうやら、お前に助けられたらしいな。礼を申す」
「あらん、別にいいのねん。でも、お礼貰えるのなら、熱いチューを」
そう言いながら、唇を突き出してくる。
「……何度も言うが、私にその趣味はない。それ以上強いるなら」
鞘に収めた兼定の鯉口
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ