第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十 〜尋問〜
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と、細身の男が目の前を通り過ぎる。
「クソッ、何処へ行った?」
「私をお捜しかな?」
小路から出て、男の前に立つ。
「な、何の事だ?」
「惚けても無駄だ。貴様が、私の後を尾行していた事はわかっているのだ」
「クッ……」
さて、逃走を図るか、それとも……。
ほう、剣を抜いたか。
「何の真似かな?」
「痛い目に遭いたくなければ、大人しくするんだな」
「脅しか?」
「それとも、腕の一本も切り落とされたいか?」
あれは、今までに人を斬っている眼だ。
それも、一人や二人ではあるまい。
……だが、我が素性を知っての事ではなさそうだ。
ならば、やはり捕らえねばなるまい。
兼定を抜き、構えた。
「へへっ、そんなひょろひょろの剣で何をする気だ?」
「ふっ、貴様のなまくらよりは斬れる筈だが?」
「ぬかせ! まぁいい、吠え面をかくなよ!」
そう言いながら、男は斬りかかってきた。
……案の定、大した腕ではなさそうだ。
それに、潜ってきた修羅場の数ならば、私は人後に落ちぬ自負がある。
総司や斉藤君ぐらいの打ち込みであればともかく、この程度では毛ほども恐怖はない。
無論、打ち合うような愚は避け、まずは太刀筋を見定める事とする。
態と隙を見せ、打ち込みを誘う。
刃風はそこそこだな。
だが、剣と身体が一体になっておらぬ。
「どうした? それでは私は斬れぬぞ?」
「や、やかましいわ!」
矢鱈に剣を振り回す男。
全て躱してみせるが、男はなかなか疲れを見せる様子がない。
体力はありそうだが、如何せん、動きに無駄が多すぎる。
「ふんっ!」
力任せに振り下ろした剣が、地面に突き刺さった。
その隙に、峰に返した兼定で、男の腕を打ち据える。
「ギャッ!」
苦悶の表情を浮かべ、男は剣から手を離す。
手応えは十分、骨が折れたに相違ない。
「悪いが、少々眠って貰うぞ」
「グッ!」
鳩尾に柄を叩き込むと、男は崩れ落ちた。
「歳三殿。私の方は、片付きました」
「疾風か、流石に早いな」
「いえ、さしたる腕ではありませんでした故」
事もなげに言い放つ疾風、実際に全く息も乱れてはいない。
「それで、相手は如何致した?」
「はっ、気絶させた上、手足を縛りました。あれでは目が覚めたとて逃れる術はありますまい」
「よし。後は、何処へどうやって運ぶか、だな」
如何なる事情と言えども、気を失った男を二人も担いで回れば、人目につく。
それに、尋問するとしても、宿舎では手荒な真似も出来まい。
「む」
背後から殺気を感じ、咄嗟に兼定を払う。
軽い手応えと共に、数本の矢を叩き落とした。
「弓か」
「不覚でした、まだ仲間がいたとは」
何処だ……?
弓の射程は、精々
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