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英雄伝説 零の軌跡 壁に挑む者たち
23話
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なくしたんじゃ。それで表向きの治安が回復して少しは倉庫を使う商人も増えてきて金も回るようになったんじゃが、2年前の緊張で商人との取引も少なくなり手強い青い不良も流れてきて、また抗争状態に逆戻りじゃ」

老人の言葉に残念さはあるものの不思議と不満や怒りなどは一切感じられなかった。
ほかの不良が逆らえない2強状態に入ったことで一般人に対して威圧的だったサーベルバイパーの注目がテスタメンツに向いたことで抗争以外の被害は出なくなっているので治安も悪くない。そもそも抗争自体一進一退で小規模なものがほとんどなのでこのままで良いとさえ言った。

「さすがに大喧嘩されるのは困るが、前に比べればマシじゃからの。旧市街はいろんな者がいろんな事情で流れて、また出て行く。どうせイザコザは絶えんじゃろうが、それもまた旧市街ということなのじゃ」

タントス老人から不良について聞けたのはこれだけだった。
ロータスハイツの廊下で少し考えをまとめるとこの旧市街が国際情勢の影響を真っ先に受ける場であることに改めて驚かされていた。
12年前の百日戦役前後は帝国が慌しくなっていた頃であり国境を接しているクロスベルは共和国が侵攻するのではないかと緊張状態になっていた。また2年前の不戦条約までは帝国が自治州併合のために兵を出す度に緊張状態が続いており、そのため物流が断続的な状態になってしまい大量の荷を長期保存する倉庫街は輸送時期が不透明で使い辛くなり荷が多くなれば倉庫代ばかりがかさむので貿易会社たちに敬遠されていく。
このため大型倉庫を利用しない小口の輸出入が増加して、クロスベルを通すだけで保管しない商取引が大勢を占めるようになっていく。
旧市街が寂れていった理由にはそんなクロスベルの商業取引の形態の変化にあった。その寂れた旧市街は一種無法地帯化しており、治安が悪いことから公然と違法取引が横行していた。
支援課としてはあのヴァルドが旧市街の治安を守っていたこと、この抗争自体がそれ以外の不良を抑えている必要悪になっていること、一般人さえ公然とこの場所で密輸が行われていたと知っているなど驚いたことばかりだった。

「スラム化し見捨てられ不良グループが幅を利かせる町か」

ロイドたちは旧市街の状況に圧倒されていた。不景気による治安の悪化、それを放置する警察。そのため不良が跋扈し、違法取引の舞台にもなっている。
しかも仕事がない者はそれを当てにして生活しており適度に治安が悪いほうが明確な収入がない住民たちははっきり口にはしないが現状維持を肯定していた。
警察の無能からこういう場が作られたことには警察に所属する者として責任を感じてしまう。かといって新人4人には何も変える力はない。
新人警官特有の潔癖さとどうすることも出来ない現実の矛盾に対面し、旧市街(ここ)の問題の巨大さに
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