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フィガロの結婚
22部分:第二幕その十四
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第二幕その十四

「フィガロ、それでだ」
「はい」
「これは何の手紙だ?」
「ええとですね」
 とりあえず芝居をすることにしたのだった。懐から何枚もの手紙を出してそれでチェックはする。しかしそれでも全てはわかりかねていた。
「これは」
「借金の証書ではないのか?」
「いや、居酒屋のメニューだ」
「これ以上は話がややこしくなるだけだ。それではだ」
 伯爵はここで一つの決断を下した。
「アントーニオ」
「はい」
「そなたは少し下がっておれ」
 彼はとりあえずここはアントーニオを下がらせることにしたのだった。
「よいな」
「はい、わかりました」
 彼もまだ釈然としなかったがそれでも今は下がるのだった。これでまた四人になったが伯爵はここぞとばかり手紙を取り出して言うのだった。
「この手紙だが」
「それは・・・・・・」
 その手紙を見て最初にうめきに近い声をあげたのは夫人だった。
「フィガロ、あれは」
「ああ」
 スザンナとフィガロも顔が一気に険しくなってしまっていた。それは隠せなくなっていた。
「あいつの辞令書だな」
「そうね。どうしましょう」
「さて、これだが」
 伯爵は余裕たっぷりにフィガロに問うてくる。
「どういうことだ?」
「ああ、それですが」
 しかしフィガロも流石である。ここでいつもの機転を動かさせたのであった。
「あれですよ、あれ」
「あれとは?」
「あいつがわしによこしたものですよ」
「あいつがか」
「そう、あいつがです」
 こう伯爵に返すのだった。
「あいつがわしによこしてくれたんですよ」
「何の為にだ?」
「実はですね。辞令の文章で欠けている場所がありまして」
「何っ!?」
 流石に命令の書類なので伯爵もこれには目を鋭くさせた。
「何処にだ?」
「印がありません」
 またしてもいいタイミングで突っ込みを入れてフィガロに加勢するスザンナだった。
「それが」
「そうです、それです」
 そしてフィガロもそれに合わせるのだった。
「ですから。それでわしに」
「うむ。ではもうこの話はこれで終わりだ」
 渋々ながらケルビーノの処置を不問にすることにした伯爵だった。
「では。こうしよう」
「有り難き御言葉」
 伯爵は辞令書を破いてしまった。夫人とスザンナはその光景を見て言うのだった。
「この状況さえ乗り切れれば」
「はい」
「後はもう何も困ることはないわね」
「難破する心配はありませんわ」
「しかし」
 伯爵は二人が頷き合うのに気付かず一人腕を組み呟く。
「何が何だか。私にはわからんことばかりだ」
「まあ地団駄踏んでも無駄だろうな」
 フィガロはそんな伯爵を見て会心の笑みを浮かべている。
「わしよりもわかっちゃいないんだからな。わか
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