第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十九 〜会見〜
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帝はご承知ではあるまい。
陛下が世俗に疎ければ疎いほど、宦官とそれに従う官吏は好き放題に振る舞える。
裏を返せば、次代の皇帝陛下もまた、それを知らぬままでいる事が望ましいであろう。
……どうも、考えずとも良い筈の事まで脳裏から離れぬというのは、あまり好ましくない傾向だ。
所詮は天上世界の話、私が気を揉んでも仕方あるまい。
気がつくと、軍は何かの施設に到着していた。
将らしき人物が、号令をかける。
「全軍、これにて解散とする。しっかりと休養を取れ、良いな?」
「応っ!」
散って行く兵士達。
……さて、我々だが。
「おい、そこの二人。将軍の警護をする、参れ」
先程の将が、声をかけてきた。
周囲には誰もおらぬ以上、我らを指名しているのであろう。。
「……某ら、でございますな?」
「そうだ。早く参れ」
警護と言うが、ここは既に洛陽の城内。
それが口実だと言う事は、すぐに気付いた。
だが、それを口にする事なく、私と疾風は後に続く。
先導する将もまた、無言であった。
……恐らく、行く先は何進の屋敷か。
十常侍の眼を気にしての事であろうが。
だが、連中は傍若無人であると同時に、狡猾という印象でもある。
件の将は何故か、一軒の民家に入っていく。
まさか、大将軍ともあろう者が、このような何の変哲もない民家に住む筈がない。
「もう宜しいのでは? 何進殿」
不意に、疾風が言った。
「何進殿……? まさか?」
「ふふ、やはり見抜かれていたか」
何の明かりもないので、表情の程はわからぬが……。
「土方とは、貴公の事だな。俺が何進だ」
紛れもなく、件の将であった。
「これは、ご無礼仕った。拙者が土方にござる」
「このような場所で済まぬが、今は十常侍どもの眼があちこちに光っていてな。貴公の事は、奴らの方でも眼を付けていると聞く」
「……然様で」
「それで、皇甫嵩からこのような策を授けられたのだ。驚いたか?」
「は、些か。しかし、何時の間にこのような策を?」
「俺は大将軍だ。演習中の将に、伝令の兵を送っても何の不思議もないだろう?」
確かに、その通りだろう。
何進、思いの外機転が利く人物なのやも知れぬな。
そして、手短ではあったが、黄巾党との戦いのあらまし、月や白蓮との経緯を語った。
ひとしきり聞き終わると、
「わかった。俺も、貴公の事は明日にでも奏上しておく。宦官を通せばどのような横槍が入るかわからんのでな」
「ははっ」
「それから、軍は洛陽に入城させられるよう、すぐに手配する」
「忝うござります」
これで、懸念事項は片付きそうだ。
疾風の申す通り、何進は少なくとも、敵に回る事はないだろう。
そのまま、何進の屋敷まで同行し、
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