13部分:第二幕その五
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第二幕その五
「何があったのだ?」
「まずいわ、うちの人だわ」
夫人は伯爵の声を聞いてさらに言った。
「どうしようかしら」
「まずはですね」
「え、ええ」
「この子を部屋に隠しましょう」
スザンナの提案で咄嗟にケルビーノを部屋に隠すことにしたのだった。
「とりあえずは」
「そう。それじゃあ」
「はい、今すぐに」
「誰と話をしている?」
二人で話しているその間にも伯爵の言葉は大きくなるのだった。
「早く開けろ。いいな」
「さあ、今」
「ええ。中に入って」
「は、はい」
二人はとりあえずケルビーノを衣装部屋の中に放り込んだ。そのうえでやっと鍵を開けた。するとその扉から伯爵が肩を怒らせて入って来たのだった。
「何故鍵を?」
「着替えていましたから」
夫人はその伯爵に対してこう答えるのだった。
「それで」
「気が得ていただと!?」
「そうなのか」
「はい、そうです」
スザンナは明るい声で伯爵に応えた。
「その通りです」
「そうなのか」
「けれどそれが何か?」
「それならそれでいい」
伯爵はそれはいいとしたのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「この手紙だ」
「フィガロが書いた手紙・・・・・・」
スザンナは伯爵が出して来たその手紙を見て思わず呟いた。
「あれは」
「むっ!?」
ここで伯爵は衣装部屋に顔を向けた。何かを聞いたらしい。
「衣装部屋で何か倒れたのか?」
「そうですか?」
夫人は今の伯爵の言葉には知らないふりをした。
「私は何も」
「誰かいるのか?」
伯爵は衣装部屋に顔を向けながら怪訝な顔になってきた。
「まさか」
「そんな筈がありません」
「いや、いるな」
伯爵は直感的にそう悟っていた。
「そうだな。そういえばスザンナは?」
「ああ、そういえばですね」
何時の間にかいなくなっていたスザンナの話が出て来たのでそれに乗ることにしたのだった。
「スザンナが今衣装部屋に入っています」
「何時の間に!?」
「動きの早い娘ではないですか」
「それはそうだが」
確かにスザンナは今はいない。それが絶好の理由付けになっていた。
「しかし。まことか」
「その通りですが」
「その割りには疑っているではないか」
伯爵は眉を顰めさせて自分の妻に問うた。
「違うか?」
「それは気のせいです」
「そうか?困っているようだが」
何処までも疑う伯爵だった。しかも実際勘もいい。
「ううむ」
「ですから」
「ではスザンナ」
伯爵は衣装部屋の前に来てそのうえでスザンナを呼んだ。
「早く出て来るのだ」
「それはなりません」
伯爵は血相を変えて伯爵の前に立って言った。
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