第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十八 〜洛外にて〜
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その後は賊との遭遇もなく、また陣中でも然したる事もない日々が続いた。
やがて行く手に、巨大な城壁が見えてきた。
「あれが、洛陽か」
「はい。ふふ、ここに戻る事になるとは思いませんでしたな」
疾風が、どこか自嘲気味に笑う。
「しかし、本当に大丈夫なのですか?」
「心配無用だ、稟。伝手もあるが、何より、今の朝廷に私のような小役人を構っている余裕があるとは思えないからな」
「それならばいいんですけどねー」
「とにかく、目立つ行動は控えよ。今、お前を失う訳にはいかぬ」
「……はっ。お言葉、肝に銘じます」
これは、本心だった。
いや、疾風だけではない。
稟も風も、愛紗も星も鈴々も、無論月達も。
……誰一人として、死なせはせぬ、その為にも、私も生き延びるだけ。
この巨大な都で、何が待ち受けているのかはわからぬが、とにかく全力を尽くすのみだ。
そんな事を思っていると、華琳と孫堅がやって来た。
「歳三。悪いけど、貴方達はここで待機という事になるわ」
「功は大きいが、官位のないお前をいきなり洛陽に入れるとはいかぬからな。無論、俺からも上奏はするが」
「気遣い、痛み入る。もとより覚悟の上だ」
「そう。ところで、一つ提案があるのだけれど」
「ほう。聞こう」
「今の朝廷で、歳三の顔を知る人物は、まずいないでしょうね。だから、貴方一人が城内に入る分には、何の問題もないわ」
「一兵卒に扮して城内へ、という事か?」
「そうよ。尤も、歳三が私に仕えてくれるというのなら、話はもっと簡単だけどね」
「またその話か。何度請われても、返事は同じだ」
「ふふ、私は本気よ?」
「ほほぉ。曹操、だいぶこの男に惚れ込んだようだな?」
孫堅が冷やかし気味に言うが、華琳は平然と、
「ええ、そうよ? 私は、才ある者は愛する事にしているの。歳三は、申し分ない存在だもの」
「てっきり、曹操は女にしか興味を持たないと思っていたんだが。両方いける口だったのか」
「な……。そ、そういう意味じゃないわよ!」
「おやおや。そんなにムキにならずとも良いではないか」
いつの間にか、立場が逆転したようだ。
流石、子持ちの余裕、と言うべきなのだろうか。
にやつく孫堅に対し、華琳は耳まで真っ赤になっている。
「しかし、そこまで曹操が入れ込むとはな。……ふむ」
と、孫堅はしげしげと私の顔を覗き込んできた。
「何かな?」
「確かに、顔は美形。その上、あの曹操が惚れ込む程の才能……か」
また、あの獰猛な笑みを浮かべる。
「おい、土方。俺の娘だが、どうだ?」
「どう、とは?」
「ほれ、既に紹介しただろうが。我が娘孫策、まだまだ未熟者ではあるが……あの通り、見てくれはなかなかだ。貴様、まぐわう気はないか?」
「ブッ! まままま、ま
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