五十七 閉幕
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ややあって「…それで?」と話を促す。
「ダンゾウの火影就任を止めさせたいのなら、綱手を捜索する者の手助けをすればいい。つまりは、波風ナルの護衛だ」
あまりにも確信めいたナルトの発言に、シンは呆れたように眉を顰めた。
「なぜそう言い切れる?根拠は何だ?」
「ご意見番はまず、現在木ノ葉に帰還中の三忍――自来也に火影就任を要請する。だが彼は性格上、就任を固辞するだろう。引き換えに綱手を連れ戻すよう依頼された彼は、波風ナルを連れて里を出る。火影就任の件で綱手を説得するには彼女の存在が鍵となるだろうね」
「……そこまで読んでいるなら、なぜ自分でやらない?」
ナルトの話を素直に聞いていたシンが鋭く眼を細める。もっともな問いにナルトはこくりと首を傾げてみせた。
「完璧な動物変化が出来る君だからこそ、護衛に向いているんじゃないか?」
「そうする事で俺に何のメリットがある?」
「猫に変化し、監視していたのなら解るだろう?」
訝しげな顔をするシンと真っ直ぐに顔を合わせながら、ナルトは答えた。
「パイプ役を通じてだが、俺はダンゾウと取り引きをしている。情報を手にする事も可能だ」
シンの動揺をナルトは見過ごさなかった。真剣な顔で考え始めた彼に穏やかな視線を向ける。水溜りには対照的な表情を浮かべる二人の顔が映り込んでいた。
「ダンゾウの情報…どんな些細な事でも欲しくはないか?」
澄んだ青空。
それを一度眩しげに見遣ってから、シンはナルトに向き合った。空と同じ青を真っ直ぐに見つめる。
「…その話、乗った」
ダンゾウが火影の座に就けば、益々彼の近辺に探りを入れにくくなる。弟を取り戻せなくなるという考えに至ったシンはナルトの申し出を受けた。
「だがあくまで三忍が火影に就くまでだ。そこから先は俺の知った事じゃない」
無言で微笑むナルト。まるで自身の返答が解っていたかのようなその面差しに、彼は顔を顰めた。反抗するように言い返す。
「俺としてはダンゾウさえ火影に就かなければいいのだからな」
「ならば急いだほうがいい。彼は裏の忍びから多大な支持を得ている。元一員だった君には解るだろう」
「それでも根は地中から脱け出せない。木の葉と違って表舞台には向いていないよ」
会話が途切れる。雲の合間から洩れた光が両者の間を遮るように射し込んできた。沈黙が落ちる。
「……大蛇丸には報告しないでおくよ」
静寂の中、シンが口を開いた。その顔はまるで人形のように無表情だった。
「だけど憶えておくんだね。今の俺は―――――」
再び水溜りに広がる波紋。緩やかに描かれる円が消える頃にはシンの姿はどこにも無かった。
「ただの大蛇丸の駒なんだよ」
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