五十七 閉幕
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いや。貴方の変化は完璧だったよ」
シンの発言をナルトはすかさず否定した。
幾ら変化が得意でも人が動物に変化したところですぐにバレる。それは動物の習性や仕草が再現出来ていないからだ。どこか人臭さが残り、本物の動物ではないと見破られてしまう。
だがシンは違う。彼は本当にその動物に成り切る事が出来るのだ。本物と区別がつかないほどの徹底振りで、変化した動物の習性・癖を完璧に再現してみせる。
動物限定だが百変化の異名をとる彼の特技は、正に密偵には持ってこいである。
現に大蛇丸の屋敷傍の野兎など、多由也は気にも留めなかった。宿の天井に潜む鼠に、香燐は気づきもしなかった。頭上で円を描く禿鷹を、我愛羅は勘付きもしなかった。
『根』でさえもダンゾウでさえもそして…幼き頃共に過ごした弟でさえも、崖上の猫の正体を見破りもしなかった。
「弟が…いや本当の弟じゃないんだけどね。俺にとっては弟のような子が動物の絵を描くのが好きだったんだ」
唐突に語り始めたシンの話に、ナルトは静かに耳を傾けた。
「でも何事も繰り返さないと上手くならない。弟の絵も最初は上手くなかったよ。だけど模写しようにも動物は動かずにじっとしているわけじゃない」
昔を思い返すシンは穏やかな表情で話を続けた。
「だから俺は弟の前で何度も動物に変化した。変化した俺を見ながら描く弟は絵がどんどん上達していった。俺もまた、動物を観察し、その癖も身につけていったから次第に変化が上手くなっていったんだ」
そこで彼は口を閉ざした。その表情は一転して苦々しい顔へ変わっていた。
「だが弟はダンゾウに騙されている。だから俺は弟を、サイを、ダンゾウの魔の手から救おうと大蛇丸の部下になったんだ」
俯く。回想に耽っていたシンは、直後キッとナルトを睨んだ。
「監視していてずっと疑問だった。結局お前は誰の味方なんだ?」
大蛇丸と繋がりがあり、そしてダンゾウとも取り引きした。我愛羅に助言めいた言葉を発したり、三代目火影と接点があったりと眼前の監視対象者の行動は、シンにとって不愉快そのものだった。
「三代目火影がいない今、次の火影はダンゾウになるだろう…お前はこれを予期して取り引きしたのか?返答によっては……」
腰に手を伸ばす。短刀に手を伸ばし掛けた彼の行動を制したのはナルトの一言だった。
「ダンゾウの火影就任を阻止させる方法ならある」
ぴくり、とシンの手が止まった。
「おそらく木ノ葉の御意見番達はダンゾウではなく三忍の誰かを火影候補として挙げるだろう。なかでも初代火影・千手柱間の孫にあたる人物―――綱手を推すな。血筋的にも問題がない。もっともその場合、各地を放浪する彼女を連れ戻さなければならないが」
淡々と告げられる言葉に、シンは眼を瞬かせた。
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