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渦巻く滄海 紅き空 【上】
五十七 閉幕
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大蛇丸と闘っている最中は決して死ぬものかと思っていた。木ノ葉の里を脅かす可能性を前にして、膝を折る事は許されないからだ。

けれど今彼は、己の死を願っている。

記憶と言えど、うずまきナルトの存在を抹消してしまった。禁術であるこの術を解くには、術者であるヒルゼンの死が条件なのである。

自分の死を引き換えにして、ナルトとナル…――兄妹の幸せをヒルゼンは祈った。それが彼の、長年抱いてきた宿願だった。



「…いいや。貴方はきっと恨むよ」
ようやく口を開く。ナルトの言葉を、目を閉ざしたまま、ヒルゼンは聞いていた。その顔には死への恐怖ではなく穏やかな表情が浮かんでいる。


「なぜなら貴方は生きるのだから」


思いがけぬ言葉にヒルゼンははっと顔を上げた。だがその時には既に遅かった。
「三代目火影…。貴方の心遣いには感謝する。だが俺には夢があるんだ。その夢を実現するその瞬間まで―――」

翳された手の合間。手の影から垣間見えたのは、愛しき子どもの哀しげな顔だった。
「眠っていてくれ。きっと、」
微笑む。
「そう遠くない未来だから」



そうして三代目火影・猿飛ヒルゼンは、眠りの海へ沈みゆく。瞼に焼き付いたナルトの顔を頭にしっかりと刻み込んで。
















「…待っていたよ」

不意に発せられた声は初めて聞くものだった。
意外にも向こうから話し掛けられたという事実に、ナルトはふっと口許を緩めた。眼を開ける。

ゆらゆらと揺れる水溜り。
その水面に波紋が広がった次の瞬間、水溜りには空とナルト以外に、もう一人別の存在が映り込んでいた。

「その姿で会うのは初めてだね」
ナルトの何気無い一言に、相手の肩がギクリと跳ねる。一瞬の間の後、「……何時から知っていた?」と鋭く訊かれ、ナルトは穏やかに答えた。

「最初は野兎、次に鼠、禿鷹………そして猫。見事な変化だったよ」
「…最初から知っていたのか」
自身の特技を簡単に見破られ、彼は顔を顰めた。次いで恨めしげにナルトを睨む。

「俺を躍らせていたのか?」
「監視していたのはそちらだろう?」
やわらかな物腰のまま、ナルトは改めて相手と向き合った。水面に反映された太陽がキラキラと煌めく。


「はじめまして、とでも言えばいいのかな?」
水溜りが再び波紋を描いた。



「元『根』の一員であり、そして現在大蛇丸の部下…――シンさん?」











ナルトとダンゾウとの対峙中、殺気を放った張本人。
大蛇丸に命じられてナルトを見張っていたシンは、不貞腐れたように唇を尖らせた。

「一応特技なんだけどな。見破られたとは自信を失くすよ」
「い
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