第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十七 〜江東の虎〜
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賊徒を蹴散らし、瞬く間に名を上げている奴がいる、とな」
少々、話が大袈裟に広まっているようだが。
「俺は孫文台だ、こいつは黄公覆。ふふ、見ろよ祭。思いもかけず、英傑が二人も揃っているぞ」
「やれやれ、堅殿には敵わぬな」
苦肉の計で知られる、呉の老将黄蓋。
……と言うには、まだまだ若々しいか。
「とにかく、役者は揃ったようね。孫堅、あんな賊、さっさと粉砕しましょう。協力してくれるわよね?」
「勿論だ。しかし、土方もなかなか隅に置けぬのぅ」
「どういう意味でござろう?」
「はっはっは。曹操程の者が、随分と親しくしているようではないか」
孫堅の言葉に、華琳は当然、という顔をする。
「歳三は、それに相応しい男ですもの。いずれ、私や貴女と肩を並べる存在になってもおかしくないわ」
「ふふ、ならばその言葉、戦場にて証明して貰いたいものだな」
孫堅は、機嫌良さげに笑った。
華琳に、孫堅。
この英傑二人が率いる精鋭が揃い、更に我が軍もいる。
この状況で、賊徒に勝機など見いだせる筈もなかろう。
三方から本拠地へと追いやられた挙げ句、黄蓋の隊が放った火矢を受け、大混乱に陥る。
村々を襲うような輩、誰一人として容赦する必要もない。
夏侯惇が、周泰が、そして疾風が、その命を刈り取っていく。
「もう、策も要らないようですね」
「ああ。しかし、孫堅軍、まさに虎の如し、だな」
「そうですねー。あまり、敵に回したくない相手なのです」
同感だな。
そのうちに、敵陣の方から、歓声が上がる。
「どうやら、終わったようだな」
「はい。圧勝、でしたね」
結果として、慎重を期すまでもなかったかも知れぬな。
尤も、思いの外、賊徒が弱かった事もある。
……それ以上に、あれほど精強な孫堅軍が加われば、負ける要素もないのだが、な。
戦い済んで、皆が戻ってきた。
「ご苦労だったな、疾風」
「いえ。ほぼ両官軍の独壇場でした。私は、さして働きもありませぬ」
「そう申すな。お前の働きなくば、戦いが長引いていたやも知れぬのだ」
「……はっ」
「良かったですねー。疾風ちゃん」
「な、何がだ?」
途端に、狼狽する疾風。
「いえいえ。嬉しそうだと思いましてー」
「風、止しなさい。今は素直に、疾風を労うべきですよ?」
「むー、つまらないのです」
見慣れた光景を眺めていると、
「土方様。孫堅様がお越しです」
「わかった。お通しせよ」
「はっ」
孫堅が、数人の将を引き連れてやって来た。
黄蓋と周泰、それに孫堅に似た少女がいる。
「お見事でござった」
「いや、あんな連中など鎧袖一触さ。お前のところも、なかなかやるじゃないか」
「はっ、忝うござる」
「……う〜ん、なんか堅いなぁ。も
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