第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十七 〜江東の虎〜
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はり、驚かれるか。
華琳は訝しげに私を見るかと思いきや、軽く笑みを浮かべている。
「ふふっ、歳三は何でもお見通し、って事よ。徐晃、それであの軍は一体誰のだったの?」
「はい。孫文台殿の軍です」
「孫文台……それなら納得がいくわ」
「うむ。『江東の虎』が率いる軍だ、精強で当然だろう」
「あの……。どうして、そこまでご存じなのですか?」
周泰は、動揺を隠せぬようだ。
容姿からして、間諜を得意とすると見たが……違和感を拭えぬのは、どうやら疾風も同じらしい。
「それだけ、此方も情報収集は欠かさぬ……そういう事だ」
「それよりも、孫堅殿がここにおられるという事は、狙いはあの残党ども……そうなのですな?」
「……はい」
隠すだけ無駄と思ったのか、周泰は素直に頷いた。
「目的が一緒なら、一度話し合いをした方がいいわね。周泰、それを、孫堅に伝えて……」
華琳がそう言いかけた時。
陣の入り口で、何やら騒ぎが起こったようだ。
「何事だ?」
「お、お待ち下さい!」
「ええぃ、どけっ!」
ずんずんと、誰かがこちらに向かってくる。
制止しようとする兵は、悉く押し退けられているようだが。
「待たれよ。ここを、どこだか知っての狼藉か?」
疾風が、その行く手に立ち塞がった。
「どけ。明命は何処だ?」
「明命?」
褐色の肌を惜しげもなく晒した女性。
身に鎧こそ纏ってはいるものの、何とも大胆な装束だ。
そして、全身から発せられる闘気も、尋常ではない。
「待たれよ、堅殿!」
その後から、別の女性が追ってきたようだ。
腰に矢籠をつけ、大きな弓を背負っている。
「あら、貴女だったの?」
華琳の言葉に、女性は鋭い眼光で応える。
「曹操。明命を返せ」
「返すも何も、別に捕らえたつもりはないわ。それに、ちょうど貴女に話を持って行って貰おうと思っていたところだもの」
では、この女性が孫堅か。
今更驚きもせぬが、本当に女子ばかりの世だと、改めて痛感させられる。
「話?」
「ええ。どうやら、同じ目的で此処にいたようだから。見ての通り、周泰には何の危害も加えていないわよ?」
「……明命。本当か?」
「は、はい。睡蓮さま」
「……そうか。俺の早とちりだったようだな、すまん」
やっと、孫堅から殺気が霧散したようだ。
「全く、堅殿は先走り過ぎじゃ。追いかける儂の身にもなって下され」
「そうぼやくな、祭。ところで、貴殿は何者だ?」
孫堅は、私に眼を向けた。
「拙者は、義勇軍を率いる土方という者にござる」
「土方……? ほう、貴殿がな」
ぞっとするような笑みを浮かべる孫堅。
美人ではあるが、どこか猛獣を思わせるものがあるな。
「聞いているぞ。官軍が逃げ惑う中、敢然と
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