第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十七 〜江東の虎〜
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いないと言う。
あれだけ、情報を重んじている筈の華琳が、だ。
「稟、風。お前達はどうだ?」
「はい。情報が不足しているので、何とも言えませんが。この界隈の、という事であれば曹操殿が仰せの通りかと」
「とにかく、疾風ちゃんが戻るのを待つしかありませんねー」
「只今戻りました」
見計らったように、疾風が戻った。
「早いわね。流石、と言ったところかしら?」
「それで、疾風。何かわかったか?」
「はい。あの軍の正体ですが……」
と、疾風は足下の石塊を掴むと、振り向きざまに投げつけた。
カン、と大きな音がして、それは弾かれる。
小柄な少女が、此方を睨み付けていた。
「私を尾けたつもりだろうが、まんまと乗ってくれるとはな」
「……クッ!」
素早く、その場を逃れようとするが、
「おっと。ここは通さんぞ?」
夏侯惇が、大剣を構えて立ちはだかる。
その背後から、疾風と劉曄の配下から姿を見せ、少女を取り囲み始めた。
華琳も大鎌を取り出し、私も兼定を抜いた。
……少女の出で立ちは、何処か見覚えのあるもの。
そう、まるで忍び装束である。
背にした剣も、日本刀によく似ている。
愛紗とはまた違う、艶やかな黒髪も印象的な娘だ。
「果敢なのは認めるが、この人数相手に斬り合う気か?」
「…………」
疾風と夏侯惇に挟まれても、物怖じした様子はない。
「さて、覚悟は良いか?」
「待て」
「待ちなさい」
私と華琳の声が、重なった。
「何処の官軍かは知らぬが、今は争う謂われはあるまい?」
「そうよ。貴女達の事は確かに調べさせたけど。敵対する意思はないわ、意味がないもの」
「…………」
答えぬか。
どうやら、ただの密偵の類ではなさそうだな。
「私は、義勇軍の土方だ。怪しい者ではない」
「あら、名乗ってしまうの? まぁいいわ。私は、陳留太守の曹孟徳よ」
すると、少女の表情が、かすかに動いた。
「ほう。私か華琳、どちらかは知っているようだな」
「……どちらも、存じています」
少女が、初めて口を利いた。
「ほう。華琳だけならまだしも、私まで知っているとは。ところで、此方は名乗ったのだ、其方も名乗って貰いたいのだがな?」
「その前に、一つだけお伺いします。何故、私を官軍の一員とお考えなのでしょう?」
「簡単な事だ。疾風が探索に出て、その後を尾けてきた。となれば、その対象の一団から派遣された、そう考えるのが妥当ではないか?」
「それに、黄巾党に貴女程の腕利きが残っているという情報はないわ。これで十分かしら?」
「流石ですね。ご両人とも、噂に違わぬ人物、という事でしょう。私は周幼平、と申します」
「周幼平?……周泰か」
「はぅぁっ? ど、どうして私の名をご存じなのですか?」
や
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