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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第十九話 記念写真
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人通りを縫うようにして進む。途中何度も握手やサインを求められて目が回りそうだったが、それでも和音は楽しかった。さすがにサインなどは断ったが、街の人と握手をするたび、ウィッチという存在の大きさ、課せられた使命の重さを実感した。

「紅茶とパンケーキ、いかがですか?」
「扶桑のお茶もありますよ〜!!」

 と、ようやく濁流のような人ごみを抜けると、宮藤とペリーヌが焼き菓子販売を行っている屋台までたどり着いた。出来具合は上々のようで、甘い香りがここまで漂ってくる。調理は二人に任せるとして、残るは呼び込みと客捌きである。と、思っていたのだが――

「――沖田さんは他にもいろいろ巡ってみると良いですわ。せっかくのローマでしょう? ここはわたくしが手伝いに入りますわ」
「あ、ありがとうございます!!」

 元気のいい宮藤とリーネの呼び声には行列ができていた。軽い休憩所のつもりだったそこは、すっかり人の山である。
 本当なら手伝いに入るところを、ペリーヌが気を利かせてくれた。和音は頭を下げてそのまま勢いよく走りだす。せっかくのチャンスだ。あちこち見て回らねば損である。

「他の皆は何をやってるのかな……」

 なにしろ出品の選定を含め、夜通しで企画を練ったのである。
 各自得意とする出し物をやろうという企画も持ち上がり、どうやったら街の人に喜んでもらえるかをそれぞれ真剣に考え抜いたのだ。その成果を確かめるべく、和音はひときわ人の集まっている一画に目を向ける。と、そこでは――


「せいやあっ!!」
「「「おおっ!!」」」
「これが扶桑の伝統武芸、その名も居合切り。さあさあ、遠からん者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ!! いざ、扶桑の神髄をご覧あれ!!」
「「「おおお〜!!!!」」」

 すぐ横の一画では、袴姿の坂本が扶桑刀を手に居合を披露していた。
 坂本の一挙一動に感嘆のため息が聞こえてくる。火のついた蝋燭を一瞬で斬り飛ばす様は何度見ても凄まじい。大きな拍手と歓声に、坂本も笑顔で応えている。

(ノリノリですね、坂本少佐……最初はあんなに嫌がってたのに)

 和音も観衆に混ざって精一杯の拍手を送る。

「隊長とサーニャさんは演奏の準備だし、宮藤さん達はお菓子作り……あとは……あ!!」

 次は誰の出し物を見に行こうかと考えていると、和音の視界に一種異様な存在感を醸し出す屋台が目に入った。……もっとも、屋台というよりは小屋に近いのだが。

「なに、これ……?」

【占い食堂!! エイラにお任せ!!】

(なんだろう、強烈な不安と恐怖に胸が締めつけられそう……)

 だいたい、なんで占い「食堂」なのだ。しかもエイラにお任せと来た。
 羽毛布団を押し得る悪徳セールスマンもここまで怪しくはない
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