襲来
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かったものの、精神的に色々と削られた響は一人寮への道を歩いていた。
するとあと少しで寮に着くというところで、鈴音が通り過ぎた。
「あれ? アイツ……」
気にかかることがあったのか、響は鈴音のあとを小走りに追った。
響が追いつくと、鈴音は寮の近くにあるベンチに腰をかけうなだれていた。だが、ただうなだれているわけではない、近づいていくと少しだがしゃくりあげる声が聞こえてきた。
響はそれに軽くため息をつくと、鈴音に気付かれないように近寄り、肩を叩いた。
「おい、どーした凰」
「っ!?」
飛び上がる鈴音だったが、すぐには振り向かず目のあたりをぐしぐしと拭うと軽く咳払いをして響に向き直った。
「あ、あら響。奇遇じゃないアンタとこんなところで会うなんて」
平静を装っているものの、彼女の声は若干上ずっているし、何より震え気味だ。そんな鈴音を脇目に響はベンチに腰をかけると、
「まぁ座れって」
「う、うん」
響に言われ腰を下ろす鈴音。
二人の間にわずかな沈黙が流れる。
聞こえてくるのは木のざわめきのみだ。
だがその沈黙を破るように響が告げた。
「また一夏になんか言われたみたいだなお前」
「……そうよ、あの朴念仁。絶対許さないんだから……」
そう言う鈴音の目には、怒りの炎が灯っていた。だが何も一夏が憎いという訳ではなく、単純にむくれているだけだろう。その様子に響が小さく笑う。
「お前、本当に一夏のこと好きなんだな」
「な、なななななな! 何を言ってるのよアンタは!? あんな奴のことなんかべ、別に好きでもなんでもないし!」
「ふーん……」
顔を真っ赤にして動揺する鈴音に響は悪戯っぽい笑みを向けると、鈴音は観念したようにため息をつき、ポツリとつぶやいた。
「……そうよ、アタシは一夏のことが好きよ」
「でもアイツはそれに気付かないと、お前も篠ノ之も大変だな」
「やっぱり、あの子もそうなんだ」
「なんだ、やっぱり気付いてたのか」
響の多少驚いた声に、鈴音は鼻で笑うと、
「あったりまえでしょーが、普通あの反応を見てわからない女子はいないわよ」
「ちがいねぇ」
肩を軽くすくめながらつぶやく響に鈴音は指をいじいじとさせながら零す。
「ねぇ響はさ、その……」
だが言葉に詰まる、しかしそこから先を代弁するように響がつなげた。
「一夏のことが好きかって? 篠ノ之にも言ったことだけど私はアイツになーんの興味もないから安心しろ」
「……そう」
「んなことよりも、てめーはさっさと一夏と普通に戻ってくれないかねー」
響のその発言に鈴音は怪訝そうな表情をする
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