一周年記念コラボ
Cross story The end of world...
終わりの世界、異端者は邂逅せり
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いないわけがないだろう、と。
瞬間、立ち尽くす蓮の背後からぶわっと風が起こった。いや、風と言うのだろうか、これは。もっと局所的で、かと言って突風というわけでもない。
そう。例えるのだとしたら、呼吸をする生物の呼気のような…………。
ゾグッ、と悪寒が背筋を伝った。戦慄が脳裏を駆け巡る。脳のずっと奥底、たぶん本能と呼ばれる場所が必死に警笛を鳴らしているのが分かる。
ギギギ、と錆びたブリキ人形のように、油の切れた精密機械のように、蓮は首を巡らせ、背後を見た。
そして、ソレを見た。
ソレは音もなく、しかし見間違いなどではなく確実にそこにいた。
ソレを簡単に表すとしたら、やはりトカゲだろう。しかし、問題はそこではない。
デカいのだ。半端なく。生物の常識を超えるほどに。
真正面から見たときの横幅は五メートルほどだろうか。足が長いため、腹をベッタリ地に付けている普通のトカゲやワニとは違い、どちらかと言ったらトラやライオンみたいな立ち方だ。それも相まって、体高がムチャクチャ高い。ざっと見積もっても、十メートルは軽く越えているだろう。
しかし、蓮がソレに臆しているのは別の理由だった。当然だ。これくらいの大きさの生物ならば、今はなきあの鋼鉄の魔城で、幾度となく命を懸けた戦いをしていたのだから。
蓮が畏怖しているのは、ソレの体表面である。
腐ったような灰色の体表にいくつも浮かんでいるのは───
数多の人の顔。
苦しげに歪む顔や、悲しみに嘆く顔、全てを憂う顔。ありとあらゆる負の感情を込めた顔達が、そのトカゲの体表に体を埋め込まれたかのようにぽっかり顔を出しているのだ。そこまではまだ、醜悪というレベルだ。
しかし、トカゲの腹の部分からは絶えずボドボドという鈍い音とともに半固体状の物体が落下し続けていた。
よく見るとソレは、元が何なのか分からないくらいに腐敗した、人だった。顎が変な方向を向き、眼球がいずこかへと消えてしまった、ヒト。
ひぅ、と喉がおかしな音を立てた。
まるで、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように、肺に空気が入ってこない。足が震え、動くことさえできない。
なぜだろう、と蓮は思った。
これより大きな生物なら、ALOの地底世界《ヨツンヘイム》でいつものように狩っている。醜悪さなら、決してこのトカゲよりも下だとは思えない。
だが、それには今の状況と全く異なる点がある。
現在の蓮の体は、SAOやALOで《冥王》や《終焉存在》と呼ばれたアバターではないのだ。現実の、リアルでの小日向蓮の体。
だから蓮の体は、今こうして硬直している。
だから蓮は、振り上げられる巨大な質量を見ていることしかできなかった。凶悪なまでに光
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