第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十六 〜洛陽へ〜
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まで来たらしい。
慌てて稟が駆け寄り、その体を支えた。
「無理をするでない。お前はまだ養生が必要であろう?」
「あまり、見縊っていただいては困りますぞ? 私はこれでも武官、これしきの事でいつまでも寝こんではいられませぬ」
「疾風。気持ちは分かるけど、無理しては」
「ありがとう、稟。もう、大丈夫だ」
そう言って、疾風は剣を脇に置き、私の前で跪礼を取る。
「お願いです。私を、お連れ下さりませ」
「…………」
「足手まといになるとお思いですか?」
「そうではない。私はただ、お前に無理をさせたくないのだ」
「お気遣いには感謝します。ですが、過分なお心配りは、武人としての誇りを傷つけるもの」
「……うむ」
「それに、洛陽の事は、この中で誰よりも詳しい筈です。歳三殿、如何に?」
疾風の眼には、何の迷いも見えぬ。
武人の誇り……それを穢す訳にはいくまいな。
「だが、疾風。お前は確か、官職を捨てて洛陽を出たのであろう? 咎め立ての恐れはないのか?」
「ふふ、ご案じなさいますな。手立ては、考えてございます故」
「そうか……よかろう。疾風も参れ」
「ははっ!」
安堵の笑みを浮かべる疾風を見て、皆も笑顔で頷いている。
「良かったですねー。ではでは、これで決定という事で」
「早速、準備にかかります」
さて、華琳に受諾の返事をして参るか。
翌朝。
皆の姿が次第に遠ざかり、私、稟、風、疾風、そして率いる三千の兵だけが残った。
「行っちゃいましたねー」
「一時の別れだ。感傷に浸るのは無用……さ、参りましょう」
「ふふ、疾風。張り切りすぎて皆に迷惑をかけないようにしなさいよ?」
「うむ」
馬に跨がり、手を振り上げた。
「皆、出立だ!」
「応っ!」
数は少ないが、激戦を潜り抜けてきた、選りすぐりの精鋭揃い。
無論、何事もないに越したことはないが……。
「疾風」
「はっ」
「……諄いようだが、くれぐれも無理はするな。よいな?」
「歳三殿……」
「そうですよ、疾風ちゃん? ちゃんと大人しくしてないと、お兄さんの愛も冷めてしまいますよー」
「なっ?」
途端に、疾風は真っ赤になった。
「風、止しなさい。病み上がりの人をからかうのは」
「おおー、稟ちゃん。余裕ですねー」
「戯れ言はその辺りにしておけ。……ほう、自らやって来たか」
我が軍に先立ち、曹操軍は既に、洛陽に向けて進軍中。
その殿に、華琳の姿があった。
馬を止め、私を待ち構えていたようだ。
「いつもの二人はどうした?」
「春蘭は行軍の指揮を執っているし、秋蘭は、陳留に帰したわ。あまり、長く留守にする訳にもいかないから」
そう言いながら、華琳は軽く溜め息をつく。
「あら、そっちは見かけない顔ね。私は曹孟徳、
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