第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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……えっと、ありゃ確か……」
昨日の夜。士郎の腰にぶら下がっている時に偶然見た光景を、デルフリンガーはぼんやりと思い出していた。
ルイズが今着ていった服を、シエスタが昨日誰かに渡したのを見た覚えはあるのだが、それが誰だったのか……ハッキリと思い出せない。
「う〜……確か……」
ぼやけた像が段々と焦点が合ってくる。
意識を集中し、何とか思い出そうとするデルフリンガーの脳裏に、桃色の影が映った瞬間―――。
「ち、ちいねえさまッ!! そ、その服ッ!!?」
「あらルイズ。どうこれ? とっても可愛いでしょ。昨日シエスタちゃんから借りたのよ。ちょっとキツいけどシロウさんはこれが好きって聞いたから……ふふ、シロウさんったらさっきから顔を真っ赤にして可愛いのよ」
「い、いや、そ、それはだな。その服はシエスタに合わせているから、カトレアには色々とサイズがだな、す、スカート丈……とか……だな」
「シロオオオオオオォォォッ!! 何処見てんのよッ!!」
「い、いや誤解だッ!」
「あらあら仲がいいわね、っあら? 胸が―――」
「見るんじゃないっ!」
「ぐふっ!?」
突然聞こえてきた隣の部屋からの怒号やら悲鳴やら打撃音とか爆発音とか……を耳にしたデルフリンガーは、
「……遅かったか」
と、その身の如く硬い溜め息を吐いた。
時は流れ、冬の寒さが和らぐ頃、トリスタニアに春がやってきた。
ぽかぽかとした日差しが降り注ぎ、暖かな風がそよいでいる。
長い長い戦が終わり、やっと戻ってきた平和に、トリステインの街には春風のような暖かな空気が流れており。
それは王宮も同じようで、城を守るための衛兵も壁によりかかりながら欠伸をするなど緩みきっていた。
トリスタニアに流れる空気は春のように緩やかで暖かだが、その街を歩く人々は夏のような熱気を放っている。長引いた戦争だったとは言え、トリステインが受けた直接的な被害と言えばタルブが焼かれた程度であり、その他に被害は全くと言ってなかった。それどころか戦争による一時的な特需により、トリスタニアはここ数年で一番の賑わいを見せている。儲け話に抜け目がない商人が、それに乗らないわけがなく、現在トリスタニアにはこの特需に乗っかろうとする商人たちで溢れかえっていた。様々な商品を前に商人が大声を上げ客を呼び。それに誘われ客は並べられた商品を買い求める。
そんな街の許容量を超える人でごった返すブルドンネ街の一角を、真っ白な馬車が走り抜けた。
白い馬車の前後を、護衛の黒い馬車が走っている。事前に人払いをしたため、馬車の歩みが止まることはない。すし詰め状態のような通りを、馬車一台を通すために人払いする等、それに乗る人物の地位を自ず
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