第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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うも最近その病気が治ったようなんです。以前は魔法を使えば直ぐに寝込んでいたのが、今では全くそんな様子が欠片も見られず」
「それは良いことでは」
アンリエッタの言葉にルイズは頷くが何処か納得していない様子が伺えた。
「ええ。ちいねえさまが元気になったことは、わたしもとても嬉しいのですが……」
「……シロウさんに近づくから素直に喜べないと?」
「うう〜……元気になったのは本当に心の底から嬉しいんですが、どうやらちいねえさまもシロウのことが好きなようで、強力すぎるライバルとして現れたことから、素直に喜べないわたしって……酷いですよね」
ガクリと肩を落とすルイズを励まそうとしたアンリエッタだが、伸ばそうとした手が震えていることに気付くとそれをギュッと握り締め胸に引き戻す。
顔を俯かせているためルイズが、アンリエッタのその様子に気付くことはなかった。
「ジェシカも流石飲み屋の看板娘だけあって、シロウを誘惑する方法が手馴れていて」
「ゆ、ユうワくッ!」
アンリエッタが素っ頓狂な声を上げたが、落ち込んでいるルイズがそれを取り上げることなかった。
「しかもシロウに近づく人はみんなスタイルが良くて……この間もシロウが以前プレゼントしてくれた服を着て部屋に押しかけたら、同じ服を着たちいねえさまが既に部屋にいたんです。しかもその時ちいねえさまが着ていたのは他の人から借りたものだったから服のサイズが合っていなくて、スカートの丈なんて股下十サントもないし、胸も今にもはち切れそうになっていて、ヴぁ、ヴァリエール家のものであろう者が、あ、あんな下品な……しかも途中で胸のボタンが吹き飛ぶし、何で同じ髪の色なのに胸と身長は全く似ないのよ」
「あ、あのルイズ?」
ぶつぶつと顔を俯かせた姿のまま呟き続けるルイズに恐々としながらも、アンリエッタは勇気を振り絞って声をかける。
「あっ! すみません姫さま。ついあの時のことを思い出してしまって」
アンリエッタの声で我に帰ったルイズが必死に頭を下げる。アンリエッタはルイズの謝る姿を揺れる瞳で見ながら、胸の辺りに感じるもやもやとしたものを抑えるように胸に手を当てた。
「それで、ルイズがお話したいシロウさんについての話はこのことなの?」
「えっと……そうですね。今のは前置きのようなもので」
「前置き、ですか?」
どういう事だろうと首を傾げるアンリエッタが左手にはめる『風のルビー』を見下ろしながら、ルイズは口を開く。
「ええ、前置きの方が長い話なんですが」
ベッドから下りたルイズは、扉に向かって歩きだす。
「ルイズ?」
ルイズの唐突な行動の意味が分からず、アンリエッタが戸惑った声を上げる。
扉の前でくるりと身体を回したルイズの顔には
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