第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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かしながら、周囲を固める大臣たちから求めに応じて裁可を下す。移動で歩く間も舞い込む仕事に辟易しながらも、アンリエッタは次々と舞い込む仕事を捌いていると一人の女官が近づいてきた。
「陛下。お客さまがお部屋でお待ちです」
「如何なる客も、まず待合室を通せと……っ、あ、分かりました直ぐに行くと伝えてください」
女官の言葉に眉を顰めたアンリエッタだが、直ぐに何かを思い出したのか、女官に指示を下す。去って行く女官の背を口元に浮かんだ微笑で見送ると、直ぐに微笑みを消し早急に仕事を終わらせようと仕事を持つ大臣たちに自ら手を伸ばし始めた。
「ルイズっ! もうっ! 最近全く来ないからとても寂しかったのよっ!」
「きゃっ! ひ、姫さま、す、すいません。最近忙しいと言う話を聞きまして、お邪魔になってはと」
「あなたとわたくしの仲ではありませんか、そんな寂しいこと言わないで。それにわたくしとあなたはお友達でしょ。特に用がなくても遊びに来てもいいのよ」
「そ、それは流石に……」
アンリエッタが自身の居室に入ると、そこには桃色の髪を持つ少女が何もない部屋の真ん中で所在無さ気に立ち尽くしていた。直ぐにアンリエッタはその少女に駆け寄るとその華奢な身体を抱きしめる。桃色の髪の少女―――ルイズを抱きしめるアンリエッタの顔に浮かぶのは華やいだ笑顔であり、年相応の少女のものであった。
「そうね。こんな何もない部屋に来ても面白くもないでしょうし」
不意にルイズを抱きしめる腕の力が弱まる。訝しげに思い顔を上げると、アンリエッタの顔に浮かぶ寂しげな色が映り、ルイズは慌てて口を開く。
「そ、そんなことはありませんっ! 姫さまに会えるだけで十分です!」
「ふふ、ありがとうルイズ。でも驚いたでしょう。何もなくて」
「ええ……噂は本当でした」
ガランとした広い居室を見渡したルイズの目が、ポツンと置かれたベッドで止まる。
「本当はベッドも売り払うつもりだったんですが、流石に財務卿に止められまして」
「あ、はは……流石にそれは止められ―――」
部屋には椅子も何もないため、アンリエッタはルイズを促し、居室に唯一残ったベッドに並んで座った。ベッドに腰掛けながらルイズが乾いた笑い声と共に何かを言おうとしたが、視界の隅にキラリと光るものが入る。
「これ、ですか。これだけは……どうしても売ることが出来なくて。言い訳にしかならないのですが、戒めと誓いのため売らずに残していたのです」
ルイズが何に気付いたのか分かったアンリエッタは、ベッドに置いていた左手を持ち上げる。上に翳す左手の指には、窓から差し込む光を反射させ煌めく指輪『風のルビー』の姿が。
「これを手放せば、国庫の足しになるのにも関わらないのに、どうしても手放
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