第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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「「お疲れ様でした」」
日課である放課後のギーシュたちへの訓練を終えた士郎が部屋に戻ってみると、そこには二人のメイドが頭を下げていた。
扉を開けた姿のまま固まった士郎は、部屋の中央でこれぞメイドの鏡といった仕草で頭を下げている二人のメイドを暫らくの間じっと見つめていたが、ゆっくりと首を横に動かす。
「……これはどういうことだ?」
「わたしに聞かないでよ」
ベッドの上に座ったルイズが、膝の上で頬ずえをしながら不貞腐れた声を上げる。
「はぁ、で、これは一体どういうことだシエスタ。それにジェシカ?」
「実は異動になったんです」
「異動?」
顔を上げたシエスタが、訝しげな顔を浮かべる士郎にニッコリと笑いかける。
「そうそう今朝早く王宮からあのエロじ……オスマンさまに一通の書類が届いたのよ」
疑問の声に応えるように、同じく顔を上げたジェシカが、先程までの見事なまでのメイドとしての礼を感じさせない砕けた仕草で士郎に話しかけた。
「書類?」
「そうです。これがその書類です」
シエスタが懐から一枚の紙を取り出すと、それを士郎に手渡した。
「えっと、は? 百合花紋ってことは、これ、もしかしなくても」
「そうよ。姫さまからの直々のご命令ってこと」
ドンッ! と、苛立ちを示すかのように、ルイズがベッドの横を踵で蹴る。
「『シロウ・シュヴァリエ・ド・エミヤ氏に、学院内より選びし使用人を一人つけること』って何だよこれ?」
「何だよって言われても書かれている通り、シロウにメイドを一人つけろっていう命令書よ。で、身の回りの世話をするのなら仲がいい人ってことでメイド長が選んだのが」
「わたしですシロウさん」
士郎の視線が向けられると、シエスタがぺこりと頭を下げる。
「シエスタが……ん? なら何でジェシカがここにいるんだ?」
「何よ。あたしがここにいることに文句でもあるの?」
胸の下で腕を組んだジェシカが、背を伸ばしてにやりと笑みを浮かべた。
「いや、文句はないんだが」
「冗談よ冗〜談。あたしは単に面白そうだからついてきただけよ。来たかい会ってルイズの面白い顔も見れたし、ね」
「ッッ、ぅう〜〜」
にやにやとした笑みを浮かべた顔を、ジェシカはルイズに向ける。
ルイズは苛立たしげに爪を噛むと、ふんっ、と顔を横に向けた。
二人の様子を見た士郎が、ススっとシエスタに近づくとその耳に顔を寄せる。
「……なあシエスタ、一体何があった?」
「えっと……ルイズがシロウさんにメイドがつくことを強固に反対したんですが、ジェシカがその命令書を突きつけて……ルイズ、すっごく悔しそうな顔をしてたわ」
「あ〜……ジェシカ、相変わらずいい性格しているなぁ……
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