暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
崑崙の章
第14話 「おはようございます、桃香様」
[7/7]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
に行くのを躊躇われていた。
 お二人の間に何があったのか、私も知らない。
 だが、桃香様はご主人様に顔を見せるのを躊躇い、それでもご主人様に会ってその日一日、何かをお話されていた。

 その翌日からだった。
 桃香様が、人が変わったように勤勉になられた。

 いや、違う。
 ”元に戻られたのだ”。私や鈴々が、桃香様に出会ったあの頃。
 桃園で、三人で誓った頃の桃香様に。

 その眼は大望を抱き、常に民のために人生を賭けようとしていた、あの大徳の君に。

 今の桃香様は、三人で旅するうちに何もできない事に絶望する前の眼だった。
 力が足りない事を嘆き、疲れ、占いなどに一縷の望みをかける前の眼だった。

 自分で何かしよう、という強い意志の眼差しだ。
 その瞳に、私と鈴々は義姉妹の契りを交わしたのだ。

 その姿が眩しい。
 桃香様がいなければ、今にも叫びたい。

 これが、我らが主。
 劉備玄徳様なのだ、と。

「……しゃちゃん、愛紗ちゃん! ねぇってば!」
「……はっ!? はい!?」
「もー……何度も呼んでいるのにぃ。愛紗ちゃんこそ休んだほうがいいんじゃないの?」
「こ、こここここここ、これは失礼を……」

 い、いかん。
 思わず物思いに耽って、桃香様のお声に気がつかなかった。

 この関雲長、一生の不覚っ!

「ほら、愛紗ちゃん、あそこ……あの荷物一杯で必死に駆けてくる馬」
「は……うん? あれがどうかしましたか?」
「あの馬の上に乗っているのって……華佗さんじゃないのかな?」
「華佗?」

 華佗……華佗……華佗……ああ。
 思い出した。
 ご主人様の兄君である、一刀様の治療を任せた医師だったはず。

「そういえば……はて、なにを焦っておいでなのか?」
「とりあえず挨拶してみようか。おーい! 華佗さーん!」

 桃香様が必死に馬を奔らせる華佗に声をかける。
 その声に気付いたのだろう。
 こちらへと馬を方向転換させて、向かってくる。

 全速力で。

「……なんであんなに急いでいるんだろ?」
「はて……?」

 桃香様と二人、互いに首をかしげる。
 すると間をおかずに、華佗が我々に向けて叫んだ。

「急いで漢中へ戻れ! 黄巾の残党が漢中に向かってきている!」
「「!?」」
「やつら、今日中には漢中に辿り着くぞ! 急ぐんだ!」

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ