崑崙の章
第14話 「おはようございます、桃香様」
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けど、やっぱり寝てないんだなー……
「うん……じゃあ、お昼まで寝るから……」
そういう雛里は、ふらふらと出て行こうとするのだ。
あんな様子じゃ、本当に部屋まで辿り着けるかあやしいなー……
……うん!
「朱里、雛里は任せるのだ!」
「へ? 鈴々ちゃん?」
「雛里ー! 部屋に行くのだー!」
「きゃっ!? ふえ?」
鈴々は、雛里を肩に担ぐと、入り口を塞ぐように立っている文官にどーんと体当たりしたのだ!
「ぐはー!?」
「ぎゃー!?」
「なんでー!?」
「邪魔なのだー!」
鈴々は雛里を担いだまま、部屋を飛び出したのだ。
「り、鈴々ちゃん!? わた、わたし、歩けるよぅ!?」
「ダメなのだ! 雛里は歩く体力も休ませるのだ! ちゃんと休むのだ!」
「そ、そうじゃなく、そうじゃなくて……うぷ」
雛里が何か言っているけど、どうせ降ろせとかそんな恥ずかし屋さんの言う事だろうから、気にしないのだ!
「よ、酔う、酔うから、もっと優しく……うぷ」
「どけどけー! 鈴々は急いでいるのだー!」
―― 馬正 side ――
――きゅぴーん!
「はっ!?」
「? どうしました、馬正様」
私が内城に振り返ると、周囲の警備兵が訝しげに尋ねてくる。
「今……雛里殿が声のない泣き声をあげた気がした」
「は?」
「いや、なんでもない……気のせいだ」
私が感じた直感に首を振りつつも、城で泣く様な事が起こるとすれば、どうせろくでもない事だと思い直す。
「それにしても馬正様。いつのまに鳳統様の真名をお呼びになられる様になったのですか?」
「ああ、この漢中にきてからだ。朱里殿、雛里殿からお許し頂いた時には嬉しかったぞ。やっと私も認められたとな」
「お二人に認められたということは、漢中でも箔がつきますな」
「馬鹿者。そういう意味ではない。同じ盾二様の臣として、お二人に認められた事になるのだ。対外な名声など私にはどうでもいい」
そう……既に一度死んだ身。
対外的な名声など、いまさらなにを欲しがるものか。
私は既に、盾二様という素晴らしい主を仰いでいる。
私と朱里殿、雛里殿の三人しかこの意味はわかるまい。
「それより、これから向かう市場は、我々が初めて漢中での政策として施行したものだ。ここでの評価如何で、今後の漢中の様々な計画が滞る。狼藉者など見逃さず、治安はしっかり守れ!」
「「「ハッ!」」」
盾二様の計画書の第一案、それは市場の活性化による税の充実だった。
漢中は、その周囲に田園地帯があり、穀物生産が盛んであるとはいえ、そのほとんどが南の巴郡まで輸送してわずかな金になるという不平等な状況
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