崑崙の章
第14話 「おはようございます、桃香様」
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―― 劉備 side 漢中 ――
「おはようございます、桃香様」
むにゃ……?
私が目を覚ますと、目の前に愛紗ちゃんが立っている。
あれ……?
私、寝ちゃった?
「大丈夫ですか? まずはこれでお顔を拭いてください」
そう言って、濡れた手拭を差し出してくれる愛紗ちゃん。
机から起き出して手拭を受け取り、顔をごしごし……あ、涎の跡が……ごしごしっと。
「ふう。ありがと、愛紗ちゃん」
「いえ……ですが、やはりしっかりと寝室でお休みになったほうが宜しいですよ?」
「あはは……気がついたらここで寝ちゃっていたの。う〜〜〜〜〜〜〜ん」
大きく伸びをして体をほぐす。
ああ、肩がゴキゴキいっているなぁ……
「……気持ちはわかりますが、しっかりとお休みになってください。それで身体を壊したら元も子もありませんよ?」
「うん、わかってる。今日の夜はちゃんと寝るから」
「昨日もそう言っておいででしたけど……」
「あ、あはは……き、昨日は寝る前に今日の分でどうしても見ておかなきゃならない竹簡があったから」
「ふう……」
愛紗ちゃんの溜息。
うう……自己管理できなくてすいません。
「何度も言いますが、桃香様とご主人様では鍛え方が違うんです。ご主人様のような無理はしないでくださいね」
「……うん。わかっているよ……」
うん、わかってる。
ご主人様のような何日も寝ていないような状態で政務をこなすような体力は、私にはない。
こんな状態だと、あと数日で私は、きっと身体を壊して寝込むだろう。
既に漢中に来てから一月あまり。
私は一度熱を出して三日ほど寝込んでいる。
それでも……それでも私がやらないと……
「朱里ちゃんも雛里ちゃんもがんばっているんだもん……私もがんばんなきゃ」
「はあ……二人はちゃんと休むときに休んでいます。ご存知ですか? 朱里と雛里は一日おきに交代で半日休暇をとっておられるのを」
「え? そうなの?」
「はい。仕事を分担して引継ぎもしっかりとしてやっています。不眠不休でやろうとしているわけじゃありません。あの二人はちゃんと寝ているんですよ」
「……それであの仕事量?」
私は、彼女達の執務室の中におかれた膨大な竹簡の量を思い出す。
あれはまるで、ご主人様が宛で行っていた仕事の量に匹敵する。
「二人は効率を重視しています。自分のできるぎりぎりの量を見据えて、それを身体を壊さない程度に調節しながら仕事を行うのだそうです。今二人が倒れたら、冗談抜きでこの漢中は動かなくなりますから」
愛紗ちゃんの言う事はもっともだと思う。
現に私が倒れても、漢中の仕事は問題なかった。
そ
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