第5章 契約
第71話 名前
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った事が有るらしく、今回はその際に死亡した先祖たちが疫鬼として使役され、無辜の民を苦しめているようなのですが……。
但し、今回の任務はその蔓延しつつある疫病を阻止する事が目的で、このマルセイユの街を訪れた訳ではないのですが。
もっとも、今回の任務をガリア全土で無事に熟す事が出来たのならば、ガリア全土での霊的防御能力が飛躍的に高まり、一度失われて仕舞った精霊たちと、ガリア王家との絆が結び直される可能性も高く成り……。
その結果として、このような疫病が流行る事や、自然現象としての天災。そして、それに伴う凶作などが起こり辛い国を作り上げる事も可能だと思いますから、厳密に言うと、完全に無関係の仕事だ、と言う訳では有りませんけどね。
その瞬間。
北に控える火竜山脈から吹き下ろす温かな、しかし、乾いた風に煽られて、少し伸び掛けて収まりの悪くなった蒼い前髪が視界を僅かに遮った。
そう。今の俺の容姿は蒼い髪の毛。そして、蒼と紅の瞳へと移行していた。
これが、聖賢王ジョゼフの言う少しばかりの細工と言う事。
俺は顧みて、傍らに居る二人の乙女に順番に視線を送った。
北風に煽られながらも、そんな事を気にする事もなく、彼女らより返される仕草は正に双子のそれ。微かに首肯く事によりこれから行う作業への同意を示す。
その仕草を最後まで確認した後、口の端に浮かべた少しの笑みと共に奏で始めるメロディ。
その妙なる音階は、地球世界ではミストラルと呼ばれる北からの強力な季節風に乗り、眼下の港町。……マルセイユの街の隅々へと広がって行く。
高く、低く。
強く、弱く。
そう。これは、ガリア国内のすべての街の土地神を召喚して彼らとの絆を結び直し、都市自体の持つ霊的な防御能力を高める為の作業。
土地神。いや、ここは西洋風剣と魔法のファンタジー世界ですから、都市を守護するのは守護精霊と呼ぶべき存在ですか。
但し、ブリミル教と言う一神教の教えに因り、精霊などの超自然な存在との絆を失ったガリアの都市の霊的防御能力は格段に低い事が、今回の牛頭天王召喚に始まる疫病騒動で露呈した為に、精霊との契約を結ぶ事の出来る俺にこの仕事が回って来たと言う事。
そして、この蒼い髪の毛、蒼い瞳。ルイ・ドーファン・ド・ガリアと名乗る事。更に、タバサ。オルレアン家次期当主にして、次代のガリア王国の王妃に成る少女が同行する事にも、この土地神たちとの絆を結ぶと言う作業にはそれなりの意味が有ります。
何故ならば、これは次代のガリアの王との契約に当たる作業と成りますから。
王家の仕事には、その国の祭祀を司ると言う仕事も存在しています。
政治は当然、祭りに通じ、祀りに通じますから。
刹那、遙か彼方に存在す
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